大垣山岳協会

伊吹山系大禿山東尾根~御座峰 2025.03.06

大禿山

【 個人山行 】 大禿山東尾根より御座峰( 1070m Ⅲ等△ ) 岐阜県揖斐川町春日中山 NT

 伊吹北方稜線上の御座峰冬季日帰り山行は南の伊吹山経由にしろ、北の国見峠からにしても遠く雪が深く体力自慢の若者ならともかく老いた身では到底届かない。それでも冬季の御座峰山頂に立ちたく地形図を眺めっこ、大禿山東尾根から挑んだ報告である。急傾斜の尾根は変化に富んで記憶に残る山行となった。上の写真は冬季の御座峰、後方は伊吹山である。

<ルート図>
  • 日程:2025年3月6日(木) 天候 晴れ時々曇り
  • 参加者:NT、SE、HT
  • 行程:駐車地8:01-大禿山東尾根取付8:12-大禿山11:15-御座峰12:04~45-大禿山13:30-林道着15:22-駐車地15:35
  • 地理院地図2.5万図:美束

 廃棄された石灰岩採掘の設備前が除雪されて広場となっており駐車した。東尾根末端を登れそうな取付きを求めて歩く、林道法面は吹き付けモルタルの壁とコンクリートブロック擁壁で取り付く島もない。やっと6mほどの斜面となったが急傾斜が続く中で唯一獣が上り下りした踏み跡を見つけて挑んだ。昨日までの雨で落ち葉下の赤土が滑って手強い、手掛かりのブッシュもなく何とか登ったが帰りはザイルを使って降りようと決めた。

 尾根に上がると傾斜は落ちたが林道への降り口は此処しかないので赤布で目印を残した。

 穏やかだった尾根が標高550mで石灰岩の壁に突き当たった。岩を避け緩傾斜を求めて斜上したが昨日までの雨と雪解け後で腐葉土の下の赤土がヌルヌルだった。雪の消えた急斜面は最悪でストックを仕舞いピッケルが有効だったが山屋の魂はドロドロとなった。本日は小島山の女傑2名が相棒で助かった。傾斜が落ちるとヤレヤレ小休をいれて水分補給、下山を考えると憂鬱だがザイルもあるし泥はアイゼンを駆使すれば何とかなるだろう。

 息を整えて北東の対岸を見ればピラミダルな鎗ヶ先の穂先が天を突いてメチャ格好いい。

 尾根芯に上がるとカルスト地形の奇岩が迎えてくれた。ドロの斜面より岩場の方が足場が決まって楽だと軽口が出るほどに緊張から解放されていた。尾根には目印など山屋の物と思われる物は何もなかった。

 尾根に出て直ぐに雪が途切れず続いてきたのでワカンを履いた。たまには踏み抜きが発生したが雪が厚くなって安心して歩けた。

 左手の谷を見上げるげると御座峰が見えた。北東に急峻に落ちる尾根、当初これを検討したのだがあまりに急で止めた。伊吹山系岐阜側は石灰岩質で険しい傾斜地が多い。

 国見岳から県境稜線が間近に見えるようになると風が出て来た。今日は10mを越える強風が吹くとの予報が出ているとのことだ。稜線が近くなりナラの木を風が揺すると1枚着込み寒さ対策をした。

 へばって来たのでトップを交代した途端に離されていく。女傑2人のパワーについて行けない、折しも傾斜が増して来て辛い所なのだが彼女たちはものともしない。

 標高950mからいよいよ傾斜が増して来た。行く手の雪庇状に張り出た下はおそらく岩だろう、これは避けて逃げるのが賢明な判断。出発時に駐車地で「アイゼンはいらない、重い」との意見が有ったが地形図で急傾斜が予見出来た。春は昼間緩んだ雪が夜間の冷え込みでカチカチになり手強い山登りを何度か経験している。装備で手抜きをしてはならない。

 岩を避けて尾根を北側へ回り込むと雪が締まって硬くなっていたが女傑2人はピッケルとワカンで越えていった。抜け出た大禿山の肩は風が強く低い雲が速く流れていた。帰りは面倒だがアイゼンを着けて下ろうと言った。

 大禿山の肩に立つと南にお椀を伏せたような山容の伊吹山が見えた。北から見る伊吹は大垣から見るアルペン的な山容とは全く違う。我が家から仰ぐ伊吹は弥高尾根のラインと地獄谷を分ける急峻な稜が特徴的で険しい山容だ。伊吹は東西南北全く違った顔を見せる。

 御座峰へは70mほど鞍部へ一旦下降する。稜線通しは雪庇の状態が確認出来ないので斜面から鞍部へ下りた。行く手の雪庇は小規模でほとんど落ちており雪稜漫歩が楽しめるはずだがこの日は雲が低く風が強かった。春山の太陽を浴びて歩くそれは今日は諦めた。

 御座峰へ最後の斜面を登る途中で立ち休憩を入れ辿って来た県境稜線を振り返った。大禿山の右奥に国見岳、その右奥は貝月山で、そのまた右端奥は能郷白山等の岐阜、福井県境の山が低い雲に邪魔されながらも存在をアピールしていた。

 遠回りの県境稜線を敬遠し斜面を直登して御座峰山頂台地へ上がった。足下に長谷川と春日中山集落が見え、その背後に南から北へ鎗ヶ先、六字ヶ峰、鍋倉山が続いている。その奥左から小津権現山、花房山その隣の灰色三角形は雷倉、写真一番右端がタンポである。

 御座峰の山頂台地は雪の丘陵状となって南へ行くほど滋賀側から吹き抜ける風が雪を捲き上げて雪稜をつくっていた。三角点の有る平地は雪の峰から3mほども低く石柱や北尾根の開拓記念碑は捜す気力を萎えさせるほど大量の雪の下であった。

 ランチタイムは山頂の雪庇状に発達した雪壁を風除けに腰を下ろした。太陽が覗いている間は春山気分を少し味わったが、今日は風が強く低く垂れた雲の流れは早かった。やはり未だ山は冬であった。

 下山は大禿山からの急下降100mはワカンからアイゼンに履き替えた。面倒だったが安全第一である。その急下降を終えると再びワカン歩行で標高650mまで下るとツボ足に切り替えた。標高600mからのドロ斜面下降が難関と覚悟していたが獣道を見つけそれを辿るとビビリながらも下れた。最悪アイゼン着用やザイル使用も考えていたが下山までに落ち葉が乾いて来たことや獣道発見も幸いした。獣は弱点を熟知して登下降をしており正解が多い。しかし、靴もスパッツも半端ないほどドロドロ状態となっていた。

 最後の関門は法面から林道への下降であるが此処は当初からザイルを使用する予定であった。尾根下降中の林道が近くなった頃右斜面に登りで気付かなかった大きな箱型の人工物を見つけた。こんな人工物を斜面まで上げるには朝の取り付き斜面からでは到底無理、もしかして道が有るかも?・・・尾根を外れて近くまで行くと人工物は山仕事用の梯子で沢山積まれていた。そこから下を見ると緩斜面が林道へ続いている。ラッキー、難無く林道へ下りることが出来た。朝登った法面から100mほど遡った所だった。これで今日の登山は終わった。本日準備したザイルとヤブを想定したノコギリは使用せずに済んだ。道具は最悪を想定して準備するが使わなかったのは山行が旨く行った証である。完

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