大垣山岳協会

古道の先に天ヶ峯の美景 2025.02.20

天ケ峯

【 個人山行 】 天ケ峯集落( 多治見市諏訪町天ケ峯 ) SM

  • 日程:2025年2月20日(木)
  • 参加者:SM(単独)
  • 行程:20日 春日井市都市緑化公園第2駐車場9:00→9:20市道外之原北線出合→10:00東海自然歩道出合→10:25同道離脱・古道入り→11:00竹藪帯→薬師堂→11:10諏訪町天ケ峯集落12:00→舗装路→名古屋市産廃処分場外周道路→1:25外之原林道→春日井市外之原町→1:55牛臥稲荷大明神社→2:45緑化公園駐車場
  • 地理院地図 2.5万図:高蔵寺

 過去2回訪れた多治見市諏訪町の天ケ峯集落にまた足が向いた。今回はかつての古道らしい踏み跡を歩き到達した。古道新発見とは大げさ、単なるやぶ歩きだと言われそうだが、ちょっと胸を張りたい気持ちでもある。

 高蔵寺ニュータウン北部にある緑化センター駐車場から多治見市三の倉に向かう市道外之原北線を北上する。採石場地帯だが、通る車や人はゼロ。やがて東海自然歩道出合。道標がたくさん並ぶ同歩道を東に進む。標高で80mほど登ったコル状の地点で自然歩道は南に曲がる。ここから東側に下りる踏み跡がある。「岐阜県側へ」の古い道標が立つ。

 以前にもここで、この道筋はどこへ行くのかな、と不思議に思ったことがあった。地図を調べて検討する。東に延びる広い沢筋に続いているなら天ケ峯に達するはずだ。間違いない。

 広い踏み跡は沢の右岸側の上部に付いている。幅は2mほどと広い。木枝の張り出しや倒木はほとんどない。ヒノキやスギの人工林だが、広葉樹の萌芽樹も多く、分厚い枯葉の布団の上をサクサクと歩く。(写真①)赤く錆びたカンがわずかだが目に入った。数か所に古い赤テープも。しかし、人の歩いた形跡はなにも見当たらない。やがて道の両側に背の高く分厚い竹藪帯。(写真②)それを抜けると民家の廃屋があり、さらに小さな神社が現れた。(写真③)

写真①
写真②
写真③

 手を合わせてすぐ社前の階段を下りると、天ケ峯集落の民家が立ち並ぶ小道に入った。すぐ先の民家の軒先の長椅子に高齢の女性が座っていたので話しかけた。彼女は「私は最近、認知症気味でたいしたことは言えないけれど」と断りを入れてから、次のように話していただいた。

 この集落の現住家屋は32戸ほど。私は今井〇〇だが、集落の家々は今井、河内、日比野の3つの姓の人ばかり。今井は平安時代の木曾義仲の重臣、今井四郎兼平の一族がここに落ち延びて定住したと言われる。

 先にたどり着いたお宮様はお薬師様で、昔は祭礼日にたくさんの店が開かれ賑わったものだ。また小生が歩いてきた古道は多治見・三の倉や春日井・外之原へ行き来する生活道路だった。近年、自動車道ができ、みな車で春日井や多治見市街に仕事に行くので、古道は消えてしまった。(写真④)

写真④=写真奥にある薬師堂から天ケ峯中心部に向かう路傍

 老女に別れを告げて、集落内を少し回った後、舗装路を南下して広大な名古屋市の産廃処分場の舗装側道、さらに外之原林道を歩いて駐車地に戻った。

 この山行で最も感激したのは消えゆく古道を確認できたことだ。落ち武者たちが開いたと伝わる集落だけに、昔この地に入るには歩くほかない秘境の地だった。やがて荷車が通れる幅の広い道が多治見の三ノ倉や春日井の外之原や細野地区と繋がったのは5,60年前のことだろうか。他に人が歩くだけの古道が近隣集落との間にあったのだろう。その一つが今回私が歩いた道だった。昨年1月27日に歩いた北側から南下する道も古道の一つだろう。今は廃道となった。

 隔絶された村里の人たちの生活の厳しさを認識したのだが、一方で四方緩やかな山稜に囲まれた天ケ峯集落の麗しい姿が今に残されている。(写真⑤)大きな土木工事や建設事業の嵐から逃れて今に至ったのは長い里人たちの思いがあったのだろう。嬉しい限りである。これは、外部の人間の私の思いである。機会があれば、天ケ峯在住者の方の思いを聞いてみたい。

写真⑤=中心部のイチョウ公園から東方を見る

 出会った老婦人はお孫さんと同居という。孫は春日井市方面に努めている。毎日車で通勤という。他家の若い人も車で近隣市街地に努めているようだ。

 この日も若い人は外部の職場に車で出かけているせいでもあるが、車の通行はほとんどない中心部。この静けさがあってこそ、天ケ峯集落の美景が成り立っている。天ケ峯集落は土岐川の支流三ノ倉川の分流域にある。長さ400m幅7.80mほどの川沿いの田んぼの周りに民家が点在する。黄色の田んぼの広がり、周囲の山林の濃緑、家屋の白や黄。空の青と雲の白が賑やかに村里を包んでいる。祖先から与えられた秀麗美景の村里。いつまでも長く生き延びて欲しいと願っている。完

写真⑥=西側から中心部を見た光景
<ルート図>

発信:2/25

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