大垣山岳協会

山野漫遊の記 前坂峠→福地峠 暗い林内、明るい村里緑輝き 2024.11.09

点名・長根

【 個人山行 】 点名・長根 ( 658m Ⅳ△ ) SM

 岐阜県の八百津町と白川町の町境尾根は約6㎞あるが、この9月末にその約半分を歩いた。今回、残す前坂峠から以東の福地峠までをほぼ完歩して来た。人工林内の暗い林内。見通しが効かず2度、尾根筋を間違える。さらに道脇に太陽光パネル群が並ぶ地帯を抜ける。地球温暖化が引き起こした山野の環境の変貌を感じた。一方で、帰路で出会った里山村里の麗しい光景に感銘した。

  • 日程:2024年11月9日(土)
  • 参加者:SM(単独)
  • 行程:9日5:50自宅発(愛知県春日井市)⇒尾張パークウェイ⇒国道41号⇒白川口⇒岐阜県道68号⇒白川町赤河⇒小倉谷⇒7:50福地峠⇒大那木⇒田甫地区⇒押上地区路側に駐車(岐阜県八百津町福地押上)
    駐車地8:35→9:15前坂峠→10:00中電愛岐幹線32番鉄塔→11:10点名長根(△Ⅳ658m)11:30→町道横断→尾根筋林道出合→1:00大那木→1:10福地峠(以下引き返し行程すべて町・林道)→田甫地区→2:25駐車地(写真①=暗闇の林内から62号鉄塔が見えた)
  • 地理院地図 2.5万図:河岐、切井
写真① 駐車地(暗闇の林内から62号鉄塔が見えた)

 2回に分け名越峠から福地峠まで歩いた町境尾根筋は特異な地理的位置にある。北側を流れる白川の支流、赤川から標高にして約350m高い位置にある。つまり、八百津町域は白川町域から急坂の上にある台形状の地にある。だから、白川町方面の北側に素晴らしい山野山岳への眺望が期待できそうだ。前回では廃林道から北側への山野遠景が見通せる機会数回を得た。期待を胸に前回下降地付近に駐車して、前坂峠へ向かう林道を進む。

 林道途中に1軒の住宅があり、居合わせた年配の男性に道筋をお聞きした。前坂峠は林道を進めばすぐ着くよとのこと。荒れた狭い舗装路を進む。イノシシのものらしい大きな糞が路面に転がりお出迎え。間もなく尾根筋に家1軒が建つほどの広場があった。ここが前坂峠だ。(写真②)往古からの峠だから、祠や石碑など遺跡を探したが何もなし。北側を覗くと、薄い踏み跡が下に降りていた。昔ここから赤川側に細道が通じていたのだ。尾根筋を南西側に進み始める。全域樹齢3,40年のヒノキ人工林。所々にアカマツの木が混じると明るくなり、元気が出る。ひょっとしてマツタケが!とガサゴソ歩くがもちろん空振り。

写真② 前坂峠

 やがて道脇に巨大な送電鉄塔が現れる。「愛岐幹線62号」のプレートがあった。美濃の山々の私の山行エリアでもしょっちゅうお出ましになる中電の送電線だ。地図を読むと、送電線はここから私の目指す尾根筋を通っている。つまり、送電線が道案内してくれる。常に上を向いて送電線の電線を目で追うのだが、ヒノキの葉枝がふさぐ。上を向いて歩こう。木の細い枝なのか電線なのか区別するのは難しい。途中で方向を間違い、谷筋を下ってしまう。猛烈なイバラの斜面に入り、悪戦苦闘の末、尾根筋に戻った。

 現れた廃林道を経て主尾根に出てから63号鉄塔脇の点名長根に着いた。(写真③=廃林道から見た点名長根の丘/写真④=鉄塔のすぐ北の草むらの中に三角点石)

写真③ 点名長根の丘
写真④ 点名・長根 三角点石

 鉄塔の下で短い昼休みを取った後、尾根筋を下り始めると、一帯は太陽光パネル地帯。幾つものパネル帯が並ぶ(写真⑤)。また、朝方車で通過した田甫地区の丘にも多くのパネルを見た。(写真⑥)静かな高原地帯の山麓に広がるのは田んぼではなく、ガラス模様のパネルの原。登山者にとっては、忌避したい光景だが、地元の人はどう思うのだろうか。その脇を下り、低層やぶの中の踏み跡を登り尾根筋に上がった。暗いヒノキ林の尾根を進むとすぐに未舗装の林道に出てしまう。止むなく進むと、舗装路に出てしまった。どこかで、見た光景だった。地図を調べると、朝方、駐車地への途中、車で通過した町道だった。

写真⑤ 太陽光パネル地帯
写真⑥ 田甫地区の丘にも多くのパネルを見た。

 福地峠までのこの町道は半分ほど町境尾根上にあるが、後は尾根のすぐ西下を通っている。舗装道路を駆け足で下るうちに福地峠に着いた。

 峠からの帰路はすべて舗装した町道を歩いた。約4㎞の山里行脚。大きな古い民家が点在している。廃屋もあるが車が置いてある現住家屋も多い。小さなロッジ風の家屋もあり、名古屋や春日井市ナンバーの車が駐車していた。沿道の眺めにうっとりしながら進んだ。ただ、全行程で通過した車は全くなかった。

 静かで明るく輝く里山地帯の現況がこのまま末永く保持されることを願っている。当初は福地峠から西側にある見行山(△Ⅱ905m)に登る予定だったが村里歩きに満足して、再訪を念じて素通りした。

 帰宅後、前回山行で出会い、お世話になった福地本郷在の林産家のI Sさんにお聞きした。氏は町内福地に約130haの山林を持つ。父が50年ほど前に植林したヒノキ林を引き継ぐ。温暖化の林材への影響は今のところ感じないが、材価低迷には悩まされる。コロナ感染ピーク時には需要が増し、価格が上昇したが、最近はまた低落していて苦しい。そのせいか、山地の地価が下落した。そのため、名古屋や恵那の太陽光パネル業者がパネル事業を広げやすくなった。つまり。地価低落が結果としてパネルを増やしてしまったようだ。

 山中林野にある太陽光パネル帯については、全国各地で土砂災害や自然景観悪化による住民の反対といったトラブル事例が林野庁関係文書に示されている。大気へのCO2排出を抑える効果のある太陽光発電は時代の要求でもあろうが、災害を起こしては台無しだ。一方、我ら薮山派登山者にとっては消えて欲しい存在である。私は平原山地が多い八百津町ではここ以外にもパネルを見てきた。I S氏によると今のところ、町内ではパネルに関するトラブルはないようだ。 完

<ルート図>

発信:11/13

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