大垣山岳協会

2024年秋のミニ合宿・穂高涸沢 №2 ザイテングラード編 2024.10.12-14

北穂高岳

 SD提供・モルゲンロートの北穂南稜~涸沢槍

【 一般山行(秋山ミニ合宿) 】 穂高岳 ( 涸沢周辺 ) 長野県松本市安曇 NT

2日目 ザイテングラード編

10月13日(日) 天候:快晴

  • A班 奥穂ザイテングラード隊
    • 参加者:L.NH、KM、GM、NT、MM
    • 行程:涸沢6:04-白出コル9:13-涸沢岳9:50-白出コル10:15~11:13-涸沢13:25
  • B班 北穂東稜隊
    • 参加者:L.SD、NY、HM
    • 行程:№3にて報告

 北穂高から奥穂高への稜線が赤く染まっていく、素晴らしいモルゲンロートに息をのんだ。若い日の新人時代、ベースの涸沢から滝谷へ通った夏合宿の日々、南稜から見た前穂高北尾根の光景が甦る。だが今日の北尾根には陽が届いていなかった、季節のせいだろうか。

 昨夜の打ち合わせ通り1時間遅れて明るくなってテントを出た。B班の北穂高東稜へ向かうSD、NY、HMと北穂沢口で分かれザイテンへ向かうため涸沢小屋のテラスに立った。カールを見下ろすと約1000張のテントが色鮮やかにお花畑のようだった。

 女性陣は涸沢小屋のトイレが綺麗で清潔で有ると言って此処まで通っていた。北穂南稜末端の斜面をザイテンへ向かって石畳の道を追った。やはり昨日の雨は陽の当らない岩を薄くベルグラで覆っており、迂闊に足を置くと滑り注意が必要だった。

 高度を稼ぐ毎に前穂北尾根のⅥ峰からⅠ峰の上部全容が現れた。あの峰の反対側は前穂高東壁で奥又白池周りはクライマーの聖地で有った。湖面は東壁を映し池の東にシンボルのダケカンバが有ってクライマーの心を癒した。だが5年ほど前に訪れた時には無かった。

 北穂高南稜末端を捲くようにしてザイテングラードへトラバースをする登山者の列がルートを案内した。若い日、穂高は夏冬を問わず通い育ててくれた山で有るがザイテングラードは下ったことのみで登るのは今回が初めてである。

 傾斜が増すごとに辛くなって前を行くNH、KM、MM中田、加藤、村田に離され後続の他パーティーにも追い抜かれる。この体たらくでは計画のジャンダルムどころか奥穂高登頂も怪しく迷惑を掛けそうだ。背後に常念岳が見える所で仲間が待っていてくれた。

 涸沢岳東面の尖峰群が青い空に浮かんでいる。カールから仰ぐ涸沢槍は格好良く鋭く天を指しているが若い時代の記憶によれば縦走路の何処が槍の穂先か全く気付かずに通過していた。

NH提供

 いよいよ傾斜が増して息づかいも荒くなり先行する仲間を追う気力が萎えて白出の穂高山荘での待機が賢明と自分に言い聞かせた。足元の狭い岩場では切れ目なく登って来る長蛇の列に下降が思うように出来ない下山者のイライラの声が聞こえた。

 北穂沢を隔てた対岸に北穂東稜が見えている。B班の3名は8時の交信でゴジラの尻尾辺りを登攀中とのことであった。心配したベルグラは東稜では既に融解しているようだ。実力的に滝谷登攀技術を持つ彼等ならザイルを必要とせず涸沢岳へ周回出来るだろう。

 白出のコルが近くなると足元や日陰の斜面に雪が出て来た。昨日の涸沢の雨は上では雪だったのだ。白出のコル迄は支障ないが奥穂へは山荘から直ぐにハシゴが続く北面の岩場となり心配である。この連休は晴天予報でアイゼン等の滑り止めは車に置いて来ていた。

 陽当たりのよい道だが綺麗に並べられた石畳みの凹みや隙間には昨日の雪が残っていた。だが歩行には全く問題なく山荘が見えるとヤレヤレあそこまで行けばと安堵した。

 穂高山荘前の石畳のテラスは薄く雪が残っており滑らぬ用心をして仲間の待つ石のテーブルへ移動した。テーブルには雪が載っていた。NH.Lは奥穂高への取り付きの雪の状態と混雑具合を見て涸沢岳へ変更するとメンバーに告げた。小生にも異論はなかった。持参したザイルを使用すれば安全を確保して奥穂へは行けるが、あの混雑の中でザイルは使えない。

 小生はヘトヘトでこのテラスで彼等を見送り待機することにした。涸沢岳へは冬季の記憶であるが特段の困難個所はないはずだ、しかし45年以上も昔のことで確信はない。

 涸沢岳山頂で「点名・奥穂高Ⅲ等△3103,3m」を前に槍ヶ岳をバックに写真に納まる仲間達。此処で三角点についての講釈、穂高連峰最高所の奥穂高岳3190mには三角点が埋設されていない。「点名・穂高岳Ⅰ等△」は前穂高岳3090,48mに有る。「点名・前穂高Ⅲ等△(成果停止中)」は西穂高に有る。また北穂高3106mにも三角点はなく「点名・北穂高Ⅲ等△3032,88m」は南岳に有る。地形図上の山名と三角点の位置は異なる。

GM提供

 彼等が帰って来るとテラスで飲み物や行動食を摂取しながら奥穂高へ向かう登山者を見学した。大半の登山者がクライミングの初歩技術を習得していないようで危なっかしい。事故が起きないのが不思議だ。年に1度や2度の講習会参加だけでは技術の上辺を知るだけで身に着けたといえない。繰り返し反復してこそ技術は身に着くことを知って欲しい。

 B班と連絡が取れ彼等は北穂東稜を終え既に涸沢岳へ向かっているようだ。だがザイテングラードは混雑しており一足早く下山すると伝えてコルを後にした。カールでは涸沢ヒュッテへの下山道を選択し下った。

 テン場へ下山すると余暇時間はリーダーのテント周辺で懇親会と決定。ビールの買い出しなど準備しているとB班が帰って来た。これで全員が揃い心置きなく宴会が出来る。

 今日は不意のヒョウや雨の歓迎は無さそうである。各自飲み物や食べ物を持ち寄って適当に車座になって先ずは今日の成果に乾杯!そして穂高の素晴らしい秋にも乾杯!酔うほどに山への抱負や目標へと話は弾み尽きず時間の経過を忘れた。楽しい時間であった。

 明日はもう下山、計画ではパノラマコースを下ると決めている。涸沢常駐の長野県警を中田Lが情報収集に尋ねると「コースには岩場が有って初心者向きではないが通行不適な所はない」とのこと。当会、今日のメンバーなら問題はないはずである。

№3へ続く


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