大垣山岳協会

2024秋、大垣市市民登山報告・御嶽山 2024.10.06

御嶽山

【 月例山行(市民登山) 】 御嶽山 ( 3067m Ⅰ等△ ) 長野県木曽郡木曽町 NT

 2024年秋の大垣市市民登山は宮澤健二リーダーの下に42名の参加で10月6日に行われた。幸い天候に恵まれて市民の方々に3000mの山を楽しんでいただけた報告である。

<ルート図>
  • 日程:2024年10月6日(日) 晴れ
  • 参加者:L.MK、ほか42名
  • 行程:田の原登山口8:35-王滝頂上11:47-剣ヶ峰12:20~34-王滝頂上12:52~13:32-田の原登山口15:35
  • 地理院地図2.5万図:御嶽山

 バスのフロントガラスへ垂れる雨粒に今日の登山を心配したが田の原に着く頃には青空が覗いた。1~4班の各パーティーは点呼でメンバーを確認しリーダーの号令で出発した。

 田の原からしばらく遊歩道を行く、オオシラビソの濃い緑にダケカンバの黄葉が映える。

 2014年9月27日を忘れてはならない。昨日までの嶽の静けさが今日も継続される保証は何処にもない。「大江権現」の祠に市民の方々と今日の安全登山を祈願した。

 道は傾斜を増して土留めを兼ねた木階段を登ると腿に負担がかかって足が重くなった。付近には「あかっぱげ」の石柱があった。用土の流出が進んでいるようで木段が浮いていた。

 木階段を過ぎ大石の間のぬかるみを気にして階段状に重なった石の悪場から高度を稼ぐと森林限界を越えて見通しの効く広場へ出た。寝不足と高度と辛い登りに呼吸の乱れを見抜いたリーダーは此処で一息入れて立ち休憩と言った。本日初めてお顔を拝見する市民の方とのふれあいの時間でもある。先ほどバスを降りた駐車場裏山の三笠山が遠くなっていた。

 これからはハイ松帯となって道沿いに太いロープが植生保護と道迷い防止を兼ねて上へ導いてくれた。登山道は火山特有の浮石が多く足元に注意が必要で気が抜けなかった。

 ここは「富士見石」と呼ばれ「ここから先は想定火口域内」の看板が有った。噴火が想定されて火口が生じる可能性が高い域内で、此処でリーダーはヘルメットの着用を命じた。

 「一口水」の滴る傍で王滝頂上への最後の休憩をした。左凹に堆積したクズ石の岩床を伝う一筋を見て渇きを覚え一口飲みたい衝動にかられたが汲み取れるほどもなく諦めた。

 いよいよ傾斜は増して右に深い谷を見て険しい岩崖を目前に見ると頭上に城壁のような石組みが近くなった。道は階段となって左上して王滝頂上へ導いた。3000mの高度を感じて歩みはノロくなり階段の一歩が辛かった。

 王滝山頂小屋横の広場では大勢の人が休憩して混雑していた。小腹を満たした小休後に剣ヶ峰を往復するが市民の方々には「必ずザックを背負って行くよう」お願いした。最悪噴火が起きた場合にはザックが身体を守る防御の役目を果たすからだ。

 王滝頂上の社で2014年9月27日11時52分の大爆発で身罷られた方々の冥福とこれから向かう剣ヶ峰への安全を祈願した。

 いよいよ「八丁ダルミ」へ足を踏み入れると剣ヶ峰は青い空に高く聳えて遠くに見えた。此処は冬季には独立峰ならではの烈風が吹き抜けて油断すると飛ばされる。ピッケルのスピッツェを刺して風上に向かい低く構える耐風姿勢訓練が実戦で学べる適地であった。

 1979年10月28日御嶽山は突然有史以来の噴火をした。それまで御嶽山は死火山と教えられていた。以来地獄谷上部に噴気孔が幾つか有って白煙を見て八丁ダルミを通行していた。それでも危険と感じず雪上訓練適地の山として毎冬訪れていた。それが2014年9月27日突然の大爆発、63名の犠牲者の8割がこの八丁ダルミだそうでシェルターが悲劇を物語る。

 剣ヶ峰への最後の階段も修復されていたが周りの石や階段が赤茶けており噴火の影響であろうか。我々は4班の最後尾であり仲間は既に山頂に居るはずである。

 広くない剣ヶ峰の山頂の一角にシェルターが有って右広場へ行くと山名柱やⅠ等三角点の傍で記念写真を撮る登山者で混雑していた。

 眼下に一ノ池と二ノ池を望む所に鐘が吊るされて打撃用ハンマーも有った。今日の山頂で叩く人はいなかったが悲しい響きはその日を思い出させ気分を滅入らせただろう。飛騨頂上付近から白く濃いい雲が湧いて流れ北の乗鞍や穂高の景色を隠していた。

 下の写真は噴火前の2013年12月撮影で北方向の乗鞍、穂高、北アルプスの景勝である。本日雲が無ければ、この景色の他に西に白山、東に木曽駒始め中央アルプス、南アルプスの連山と富士山、360度の大展望を市民の方々にお見せ出来たのだが残念で有る。

 混雑する山頂で本日の市民登山参加者にシェルター近くへ集合していただき記念写真を撮った。そして各々の写真撮影を早く済ませ班ごとに山頂を後にするようお願いした。やっと到達した山頂!もっと堪能し噛みしめたいだろうが無情の言葉を発して下山を強いた。

 市民登山参加者には説明不足であったが山頂を極めたら危険地帯から「一刻も早く立ち去る」のが安全登山の鉄則である。登山を長く継続する極意は「登山で隙を作らず見せない」ことである。2014年9月27日の御嶽山登山者は「よもや」に遭遇した。彼等の轍を踏んではならない。比較的安全と思われる王滝避難小屋まで引き返すと昼食大休憩をとった。

 1時30分に王滝山頂小屋を後にすると俄かにガスが湧いて周りを包んだ。北ア等の高山は午後の天候が不安定である。山は早立ち早着、若い頃の山登りの鉄則を思い出した。

 王滝頂上から2時間で田の原へ着いたが帰りの道は遠く感じた。2014年の噴火以降初めて実施した御嶽山市民登山は一人の落伍者もなく全員元気で下山出来て大成功で有った。市民の皆様お疲れさま、スタッフの皆様ありがとうございました。小用や着替えを済ますとバス乗車前に全員で御嶽山をバックに記念写真を撮った。山頂は午後のガスに包まれて少し残念だがこれが高山の特徴である。

 春秋年2回の市民登山は大垣山岳協会が市民の方々と触れ合う貴重な機会である。登山は年齢を問わない生涯スポーツで有る、これを機に登山の基礎技術や基礎知識に興味を持たれ安全で楽しい山登りを継続していただければありがたい。我が会がその一助になれば幸いである。

 田の原の売店や道の駅の売り場などが締まっており土産物を買いそびれ方には申し訳ありませんでした。また来春の市民登山で会えることを会員一同お待ちしております。完


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