大垣山岳協会

山考雑記 尾根筋は夢の楽園 帰りは国道炎熱歩き 2024.08.07

点名・細野

【 個人山行 】 点名・細野 ( 697m Ⅲ△ ) SM

 点名細野への長い尾根筋では涼風がそよぎ、明るい緑の園歩き。だが、山を下りて長い国道歩き。カンカン照りの舗装路を2時間半歩いた。熱中症多発の日常だが、無傷で帰還。それには、自分なりの防護対策が役立ったようだ。

  • 日程:2024年8月7日(水)
  • 参加者:SM(単独)
  • 行程:自宅(愛知県春日井市)5:50⇒尾張パークウェイ⇒国道41号⇒高山線下油井駅⇒7:20国道256号無渡谷入口集落で駐車(岐阜県白川町上油井・標高約230m)
    駐車地出発7:50→8:00尾根取り付き→10:10三角点名細野(△Ⅲ697m)10:40→11:10・P687→12:05谷筋降下→12:25林道水無線出合→林道降下→2:25薄野地区民家→2:30国道256号出合→4:05飛保橋通過→5:00駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:金山

 飛騨川沿いの国道41号を北上し、川左岸側の上油井から東に無渡谷が延びている。その谷筋の北側に長い尾根が伸びて、最高部に三角点がある。三等の点名細野である。春以来の懸案でもあった。熱中症警告がでている猛暑だが、山中は樹林が防いでくれるだろうと、4軒ほどの集落のSYさんの庭先に車を置かせてもらい、尾根突端にある墓地から登り始めた。全山ヒノキの人工林。尾根筋に薄い踏み跡が見えたり消えたり。アセビやシキミなどの照葉樹の低木の間を軽快に進む。

 山林はすべて民有林。SYさんら地元の人は山とは関係ないので登ったこともないそうだ。一部の南側斜面で間伐の跡が見られたが、近年での手入れ作業の跡は見られない。道跡の上にマツの倒木が横たわる。数十年の年月の間にボロボロに分解しつつある姿。(写真①)やがて、分解無機化が進み、そこに種子が落ちて新たな樹木が更新するという。これが「倒木更新」なのだが、ヒノキ人工林の中で更新するのはマツなのかヒノキなのか。理解を越える。

写真①

 ヒノキの密な林によって周りの景色はほとんど見えない。やがてすぐ北側に並行する支尾根が標高550mで合流する。傾斜が緩くなり、微風がそよぎ、けっこう涼しい。巨大なアカマツが道脇に立ち並ぶ。立ったまま外皮が剥がれ落ちて、黄色の木質を見せている姿が何本もあった。幅15mほどの平地に積もる枯葉の中に点名細野の点石が頭出していた。(写真②)国土地理院の白い標柱も看板もない。

写真② 点名細野

 あったのは1本の赤テープだけだった。早目の昼食をとった後、南東に向きを変えた尾根筋を降り始める。分厚い腐葉土の中に背丈10㎝ほどの可愛らしい白いキノコが目に入った。(写真③)タマシロオニタケ(テングタケ科)と見た。根元がふっくらと膨らむのが個性らしい。

写真③ タマシロオニタケ(テングタケ科)

 他にも白や黄色のキノコが幾つもあったが、観察する余裕はなく、先を急いだ。P687mを越して水無峠に向かったが峠らしい地点が見つからず、標高650m付近で北東に下りる谷を下る。後で分かったが、峠より約500m手前の谷だった。緩やかな谷筋から間もなく、幅のある林道に出た。地理院地図にも載っている。標識には林道水無支線とあった。

 やっと正規のコースに入ったのだが、甘かった。林道を歩き始めてまもなく派生するガラガラ道に入ってしまった。水の流れが反対の東向きであるのに気付き、引き返して地図通りの道を進む。1時間弱の時間損失。急ぎ足で湾曲する林道を下りると、最初の農家が現れ、作業小屋に居た男性に道を聞いた。ここは白川町下佐見の薄野地区の最西部であり、前方に見えるのが国道256号とのこと。私の計画ではここから点名にもなっている細野集落から地図に載る破線歩道を歩いて帰還する予定だった。だが、男性氏によると通る人はなく、荒れ放題だそうだ。目の前に見える佐見川沿いの国道256号を歩くのが安全だと言う。それを聞いて、国道経由を選んだ。

 佐見川左岸の田んぼ脇を通り小さな橋を渡り国道に出た。(写真④=川の向こうに国道)国道を歩き出してすぐ、陽光が全身に降りかかる。気温は37、38度ほどだが、陽光の直射と舗装面からの跳ね返り熱。道路右側の多くは急峻な崖である。道路がカーブする所では影が出来て陽光が途切れる。影を選んで路面の左右を行ったり来たり。それでも炎熱に包まれる。国道とはいっても、交通量が少ない点が幸いだった。勿論歩く人はゼロ。昔ならヒッチハイクをしたのだろうが、そんなご時世ではない。

写真④

 道中、2回ほど川の左岸側に小橋を渡り日陰で休んだ。ザックからサーモスのテルモス魔法瓶750㏄を取り出し氷いり冷水を飲む。さらに冷凍した缶コーヒー2本計800㏄。合計約1.5ℓの氷水を用意してきた。行動中、この氷水を飲みながら歩く。体外からの熱を体内で抑える。その作戦が功を生んだのか。約6km、2.5時間の炎天国道歩きの末、駐車地に無事に帰還できた。

 当日は好天の天気予報なので出かけたのだが、暑さ対策は十分意識していた。ただ、帰路も林内を歩く予定にしていたのでカンカン照りは考えていなかった。国道を歩くか、細野集落から破線歩道を歩くか。出会った男性氏の勧めを安易に選んでしまった。破線歩道を歩けば面白かっただろう。選択を誤ったかもしれないが、炎天下の国道歩きも貴重な教訓を得たと考えている。地獄の国道歩きだったが、道路下を流れる佐見川渓谷の美景は暑さを流してくれた。(写真⑤)濃紺の深みから白い岩の間をゆったり流れる水面を眺めているとわが身が涼しい水中に浸かっているように思えた。

写真⑤

(注) 缶コーヒーの冷凍では予めキャップを緩めてから冷凍庫に入れる必要がある。でないと暴発する危険があるようだ。

<ルート図>

発信:8/10

コメント