【 月例山行(市民登山) 】 大日ヶ岳 ( 1709m Ⅰ等△ 美濃百山B級 ) 郡上市白鳥町 NT
2024年、春の大垣市市民登山はFT.Lの下61名の参加で郡上市と高山市に跨る大日ヶ岳ひるがの高原コースで行われた。苔むした老ブナの林床で見つけたキクザキイチゲやサンカヨウ、エンレイソウの小花を囲みカメラを向けた。タムシバは高度を稼ぐ毎に白さを増して落葉樹の芽出しと競演し春の尾根を飾っていた。少なくなった残雪を踏み締め山頂へ立つと360度の大展望台であった。目の前の北に別山と白山が一際大きく白く、東には御嶽山から北へ乗鞍岳、穂高から続く北アルプスの連山が白い帯となって眺められた。
- 日程:2024年4月28日(日) 晴れ
- 参加者:FT.L以下61名
- 行程:駐車地8:11-水道山登山口8:29-いっぷく平10:20-展望台12:21-大日ヶ岳山頂12:00~13:15-いっぷく平14:57-水道山登山口16:14-駐車地16:25
- 地理院地図2.5万図:ニノ峰、石徹白
大型バスが水道山登山口までは入れないので10分ほど手前のキャンプ場で降車した。この水道山駐車地は一時期車上荒らしが続いて我が会も被害に遭ったことを思い出した。
道脇にはコシアブラが摘み頃で市民の方々に旬の味を紹介出来る良い機会となった。春は山菜摘み、秋はキノコ採り、山登りの幅を一ツ増やし登山をもっと楽しんでいただきたい。
尾根は緩傾斜と小さな急傾斜を繰り返して台地に着いた。頭上を見上げるとブナの芽出しが燃えるような濃い黄緑色で惹きつける、スマホを構えて心に残る1枚をゲット。
樹間、北東の方角に雪を抱いた山塊が見えている。吊り尾根とキレットが確認出来るので穂高に間違いない。目の良い人は槍ヶ岳が見えると言っている、南岳から大喰岳稜線の左に見える白く尖った山は笠ヶ岳なので槍ヶ岳と重なって見えていると思われた。
傾斜が落ちたブナの林を行く、樹間の西方向に大日ヶ岳が山頂下に雪渓を抱いているのが見えている。大パーティー登山は単調な山歩きになりがちであるが時折現れる大きなブナに癒される。
北に一際白く雪を抱いた山塊が現れ交代で撮影タイムとなった。近郊でこれほど雪を抱いた山は白山以外に考えられない、だとすれば手前は別山で間違いないはずだ。
林の中には開花前のユキザサが多かった。穂先に雪の結晶のような白い小花を沢山つける。未だ地上に出て日が浅い幼草なのか小ぶりで「チゴユリ」と見間違いそうである。
エンレイソウ黒花である。和名は「延齢草」と書くようだ、何処の山だったが忘れたが白花を何度か見たことがある。南沢山だったかな?ミヤマエンレイソウと言うようだ。
陸軍陸地測量部の三角点と旧農商務省山林局の主三角点が並び鎮座していた。山林局石柱の天端は丸い、おそらく此処は明治初年まで郡上藩有林であったものが官有地となった。この他に徳川家御料林(木曽に多い)で有ったものが明治政府に摂取され天皇家財産区となった。御料局測量部の三角点は天端の四隅が三角形にカットされている。
点名・鎌ヶ洞Ⅲ等△の有る広い台地は「いっぷく平」と言い落ち葉で埋まった広場で気持ちの良い休憩場所となっていた。ブナ林の台地で思い思いに休んだ。
林の中で見つけた薄青紫色のキクザキイチゲ、和名を「菊咲一華」と書くようだ。白花や八重咲きもよく見る。類似にアズマイチゲが有り和名の「東一華」は関東で発見されたことに由来するが西日本にも分布している。アズマは葉の切れ込みが浅いというが見分けは?
サンカヨウ、和名は「山荷葉」と書く、荷葉とはハス(蓮)の意味のようだ。6月頃の花なのでこの一輪は早咲きだった。低温高湿状態を長く保つと花ビラが透けて見えるので「スケルトンフラワー」との異名もあるようだ。水をかけたくらいでは透明にならないそうだ。
幹肌がガサガサに荒れて直径が90㎝ほどもある老ブナが林のあちこちに有った。自然環境にもよるが直径70㎝ほどで樹齢130年くらいのようなので樹齢200年以上と思われる。因みにブナの平均寿命は300年ほどのようだが700年物も発見されているようだ。
前方のブナの高木は未だ芽吹き前で高度を稼いだことを実感する。周りに笹が現れて来たが軸が細くクマイザサの類似と思われた。15㎝ほどに伸びたタケノコは細くて採取する気も失せる。奥美濃で目にする根曲がり竹(チシマザサ)のタケノコは太くて美味しいが、
行く手頭上のタムシバの白花に魅了される。「噛柴」に由来し葉を噛むと芳香性が有って甘いようで「カムシバ」がなまったとか。タムシバとコブシの違いは開花時に花の下に「葉が一枚付出ているのがコブシ」葉のないのが「タムシバ」だそうである。昔、若い時分に高木泰夫先生(植物選考)に教えていただいたのだがすっかり忘れていた。
木々に邪魔をされずに別山と白山が臨めるようになった。この時期に白山の山頂部に黒い岩肌が見えるのも珍しい、今冬の積雪の少なさを象徴しているようだ。
周囲の木々が低く細くなってオオシラビソやダケカンバと灌木混じりの笹ヤブとなって道は残雪の下に消えた。半袖で過ごせるほど温かい季節に雪を踏んで歩くのは楽しいはずだが疲れも出て来て所々のぬかるみも体力を奪った。また靴の汚れも気になった。
1580mの展望台広場への急傾斜を喘いで登る、振り返ると御嶽山と乗鞍岳が有って北へ穂高からアルプスが白い帯となって連なっている。槍ヶ岳は笠ヶ岳と重なって見え、山脈の北方向に目を凝らすと大きな山体の薬師岳が有ってその先の白く高い山は立山、ということは薄く黒いピラミダルな山容がぼんやりと霞んでいるが剱岳に違いなかった。
展望台から大日ヶ岳山頂を望んだ。縦に白く延びた雪渓の上部斜面に先を行く仲間達の隊列が見える。おそらく第1班は山頂へ到達しているだろう。急がねば!
この残雪が途切れた先の急斜面を越せば山頂である。山行前夜は興奮して眠れず早朝の出発も辛かったが耐えてもう少しの所まで来た。あとひと踏ん張りで山頂だ。
山頂台地への抜け出しでピンクのショウジョウバカマが迎えてくれた。下界で見る物より赤みが濃くて可憐、頑張ったご褒美なのだろうか。
大日如来坐像に迎えられて山頂に立った。大日ヶ岳山名の由来は養老元年に泰澄上人が如来像を山頂へ祀り開山したことと伝わる。現在の如来坐像は真っ白でピッカピカ1200年前の物とは到底思えない。だが、白山、御嶽、乗鞍、穂高や槍の北アの山脈、Ⅰ等三角点360度の景色を毎日眺めて社会の平穏を祈ってくれているのだろう。
今日は61名の参加者中で2名が体調不良、2名が付き添いで班行動から離れた。今日の為に体調管理や体力維持に努めて来られただろうに本当に残念で無念であっただろう。次回は此の輪の中で一緒にポーズを取りましょう。
春の快晴に恵まれて大垣市民の方々に絶景の雪景色の山々をお見せすることが出来て何よりも幸いであった。市民の方々の感激の声を聴くときが一番の会員へのねぎらいで有り主催者冥利に尽きる瞬間であった。長いコースで先頭の1班と最後尾の4班では山頂到達に相当時間差が生じたと思われ反省材料も多々有るが秋の御嶽山へ活かしたいと思う。
市民の方々についてはバスの中でお話しした地形図とコンパスを使用しての登山に是非取り組んでいただきたいと思います。そして日帰り山行であってもヘッドランプの携行と天気予報で快晴が約束された日であっても必ず雨具をザックに入れて装備の手抜きをしない癖をつけていただきたいと思います。
秋は御嶽山で市民登山を実施する予定です。今回よりも傾斜が増して標高も3000mと体力を必要としますがその分山頂からの眺めは素晴らしく感激もひとしおでしょう。体力向上に努められて秋に御嶽山で会えることを会員一同楽しみにお待ちしております。完
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