4カ月前に訪れた白川町の高原にあるパール白川の別荘地を再訪した。別荘地はどこでも嫌われ、消滅しかけている。ここも同じだ。だが、山野、樹林、自然への関心が高まる昨今、この別荘跡地の林野は魅力的だと思った。一方、別荘跡地の再生のためには地元の住民との連携が不可欠だろう。新しい里地里山の関係を求めたい。
【 個人山行 】 宇枯高原 ( 点名・休石 773m Ⅲ△ ) SM
- 日程:2023年4月9日(日)
- 参加者:SM(単独)
- 行程:自宅5:40⇒国道19号⇒国道418号⇒木曽川武並橋⇒国道412号⇒県道68号(恵那白川線)⇒白川町赤河(あこう)⇒林道⇒隠居山観音行き林道脇で駐車(岐阜県白川町赤河上赤河)
駐車地8:05発→小規模林道→8:30林道裏岩山Ⅰ号林道出合→9:20点名休石(△Ⅲ773m)→11:00三角点宇枯周辺11:35→北東尾根上→西小黒川沢下降→12:50別荘道出合→2:45パール白川中心部→林道上赤河線→4:30駐車地 - 地理院地図 2.5万図:切井
狙いの一つは前回登り残した二つの三角点踏査ともう一つは廃絶別荘地のその後の様子である。絶好の青空の朝、標高約620mの駐車地では零下1°c。前回山行で歩いた細い支線林道を登り始める。ヒノキの伐出作業現場の中の道を上がり、やぶ道を越して裏岩山Ⅰ林道に出た。パール白川別荘地から降りてくる一級林道だ。そして、すぐ先で東側の尾根の中に入る。薄暗いヒノキの人工林である。ピークの位置を誤り少し手間取ったが、ヒノキ林の間に開いた雑木林の明るい丘の上に休石の三角点を見つけた(写真①)。辺りを見回すとすぐ南側に小振りの椅子のような岩を見つけた(写真②)。これが休み石なのかな、とつぶやく。
やや急な斜面を降りて元の林道に降りてすぐ、西側尾根に延びる歩道を見つけて入る。緩やかな道沿いに「地籍調査」の赤テープと青い杭が点在する。ヒノキ、スギのひょろひょろ林が密集する。暗くて日差しはゼロ。やがて、地図にある林道を横断して三角点宇枯を目指して休石から続く尾根の支尾根に取り付く。各所で人工林が途絶えて明るいコナラ、クヌギ林が現れ元気が出る。踏み跡は消えて薄いササやぶを越えて、標高900m前後の斜面に出る。辺りに点名宇枯(Ⅳ907m)があるはず。ひざ程度の高さのクマザサ。上下左右ぐるぐるうろうろガサガサ。30分余、探したが見つからない。普通、三角点の周囲には赤布などの目印が付いているのだが、何も見当たらない。(写真③=捜し歩いたササ原斜面)地籍調査の手段としての三角点の役割は近年消えようとしている。高度通信技術、GPS観測の進歩のせいで、三角点が破損しても構わない時代になった。斜面の土砂に埋没しているかもしれない。あきらめて尾根筋を下る。
北西に降りる歩道を進めば、パール白川別荘跡に着くはずだが、道ないササ原尾根をどんどん下って、さらに小さなピークに登ってしまう。結局、広い沢筋を下りきり広い道路に出た。この後も迷走が続いたが、途中でパール白川から離れて北東側に向かう町道を進んでいることが分かり、戻って別荘地に入った。里山と言うべき危険度の低い山域なので、緊張感を欠いていたのか。電子コンパスの磁気補正を怠ると、方位把握が狂うことがある。今回補正したのはかなり遅かった。それが方位を誤った原因かもしれない。
パール白川の周りはヒノキ、スギの厚い人工林に囲まれている。ほとんど手入れ不足の薄暗い密集林である。すぐ近くにある別荘地でも、見通せない。逆に言えば、方位の把握は最重要となる。
別荘地に入り、宇枯峠辺りでは崩れた廃屋の痛ましい姿が点在する。ただ、廃屋ばかりではない。少し修理すれば使えそうな家屋もある。中心部にある二つのホテルは一部に崩落部がある。使うには本格的な改修工事が必要だろう。(写真⑤=白川グランドホテル、看板には「落下物有 注意」とあった)
別荘中心部から林道上赤河線を下る。道の西側の斜面に広がる別荘売り出し地に入ってみた。「〇〇様」とある小さな看板があちこちに立つ。用地を買った人の名だろうか。でも建物は一軒も見られない。ただ、上水道用の施設や広い砂利道路など基盤施設は生きているようだ。
林道を南下していると、前方にヒノキ林が伐採され青空が広がる夢のような光景が広がった(写真⑥)。今は薄暗い人工林の中にある別荘地だが、50年前の開設当時はこのような別天地だったのだろう。
山行終了後、パール白川について地元の人に話を聞きたかったが途中で誰一人とも出会わなかった。そこで白川町役場商工観光係に聞いてみた。
パール白川は1970年前後に愛知県の不動産業者が開発開業、最盛期には100軒ほどの別荘が実在していた。近年の廃墟化については承知しているが、個人企業の管理なので町として関与する段階ではない。でも、山林利用法についてはロゲイニング(注)や宝探し、オリエンテーション的スポーツのコース造りなどはどうかと思うが。具体化はしていない。
前回訪問時にも思ったことだが、別荘地内には立派な道路や上水道設備など公共設備が現存している。白川町は開設時に上水道設備に対して若干の補助金を支出したそうだ。それらが廃滅するのはもったいない、と思う。遊戯スポーツの場所でもよい。人々が楽しみながら高地の森の中のおいしい空気を吸って、豊かな自然を知る。別荘廃屋が並ぶ道を歩いて、新しい森の別天地の出現を夢見た。
パール白川は標高700~900mの高地にある。しかし、一帯はかつて上赤河や隣の切井集落の里山だっただろう。家屋資材や農業肥料材の供給地として大切な山林だった。林道上赤河線沿いの標高約600mの地には今でも数個の民家があり、少し西側の上赤河の最北集落も標高500mを越す。もちろん、集落周辺には一定の田んぼがある。それを維持したのは里山だった。しかし、里山は戦後まもなくヒノキなどの人工林に覆われてしまい、集落との縁が切れた。そこにパール白川ができた。その別荘地が消えつつある。この地が再び現存集落の里山となって欲しい。ではどんな縁が山と里を結ぶのだろうか。完
<注> ロゲイニング
ナビゲーションスポーツの一つで、地図をもとに時間内にチェックポイントを回り、得点を集めるスポーツ。チェックポイントをまわった証拠として、写真を撮る、または電子チップを利用する。
発信:4/13
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