大垣山岳協会

絶景の天上回廊周回・野谷荘司山~三方岩岳 2023.03.20

三方岩岳

【 個人山行 】 野谷荘司山 ( 1797.2m Ⅱ等△ )~ 三方岩岳 ( 1736m △なし ) 丹生 統司

 3月の空気の澄んだ快晴日だった。御嶽山から乗鞍、穂高から剱岳へ続く北アルプスの連山と白山から笈ヶ岳、大笠山、両白山地北方の絶景の山々を眺めて歩いた報告である。

<ルート図>
  • 日程:2023年3月20日(月) 快晴
  • 参加者:L.丹生統、柴田悦、林 旬、三輪唯
  • 行程:白山白川郷ホワイトロード馬狩ゲート6:00-野谷荘司山10:07~57-三方岩岳13:02-白山白川郷ホワイトロード馬狩ゲート15:56
  • 地理院地図 2.5万図:中宮温泉、新岩間温泉

 馬狩ゲートから見上げると野谷荘司山から三方岩岳の県境稜線がモルゲンロートに染まっている。気温はー4℃、雪はカチカチ、白谷右岸尾根への斜面に取り付いた。

 鶴平新道へ合流する辺りでブナの古木に思わず立ち止まった。以後も雪床に美林が続いた。

 尾根は傾斜を増して来た。ピッケルとアイゼンのコンビネーションで慎重に行動する。背後は庄川を挟んで左から猿ヶ馬場山、帰雲山その右は御前岳。

 冷え込みは厳しいが雲一つない、最高の登山日和だ。白谷の奥に野谷荘司山登頂後に周回予定である県境稜線と三方岩岳が見えている。

 急斜面を登り切り傾斜の落ちた台地で振り返った。右の猿ヶ馬場山から籾糠山、天生峠を挟んで北ソウレ山、牛首峠から三ヶ辻山へと続く白川郷背後の山々、その後ろに北アルプスの白い山並みが見えて来た。

 野谷荘司山頂へ最後の難関、赤頭山(1602m)直下を辟易するような長いトラバースが続いた。斜面の途中で振り返ると穂高や槍ヶ岳、剱岳など北アルプスの名山が肉眼ではっきり確認出来た。

 長いトラバースを終えて尾根に上がると荒谷を挟んで対岸の三方崩山から奥三方、間名古の頭を経て白山へと続く主稜線が目に飛び込んで来た。50年以上も昔のこと、入会2年目の春山合宿は白山集中だった。三方崩山ルートに配属された新人時代を思い出した。

 一昨日に降雪があったようで登って来た尾根が眩しいほど白く輝いていた。苦しい登りであったがアドバイスを素直に聞き入れた仲間たちは危険個所を順調に通過して来た。全容を現した北アルプスの白い山並みを眺めると労した分だけ報われると思った。

 県境稜線に着くと尾根は緩やかになったが野谷荘司山頂までが遠く感じた。群青色の空と白い雪、オオシラビソの緑のコントラストを言い訳に立ち休憩を入れて景色に魅入った。

 スキーヤーが追いかけて来た。北ソウレ山、三ヶ辻山、人形山の奥に黒部五郎や薬師岳、立山、剱岳、朝日岳など北アルプス北部の山が一山一山明確に確認出来た。

 野谷荘司山山頂から見る白山は大きく白く荒々しくて美濃地方の南から見る山容とは違って見える。野谷荘司山はつい膝をついて合掌したくなるような遥拝台地であった。

 笈ヶ岳、大笠山等の両白山地北方の山々をバックにおすまし顔である。山の神様に気にいられて最高の天気の中で野谷荘司山頂には約50分滞在、360度の展望を大満喫した。

 10時を過ぎると気温が上昇し雪は緩んだ。新雪も10㎝を越えておりアイゼンからワカンに履き替えていよいよ三方岩岳へ向かって周回を開始した。これからは先人のトレースはなく4人だけの最高の天上散歩が楽しめそうだ。

 だが、この県境稜線は白谷側に巨大な雪庇が張り出しており油断が出来ない。新雪はクラックを隠しており慎重な行動が求められた。そして稜線鞍部の奥に笈ヶ岳と大笠山の白い山塊が威嚇するように聳えていた。

 三方岩岳が案外近そうに見えているがピークが3ツも隠れておりまだまだ遠い。根雪の上に新雪が乗っておりダンゴになってワカンが滑り歩き辛い。疲れて口での呼吸が多いせいか異常に喉が渇いた。

 三方岩岳が近くなるたびに白山が少しずつ遠くなって行く。雪庇が発達した岐阜側の急峻な谷とは対照的に緩やかな石川側の斜面をルートに選び踏み跡を残した。

 白山や北アの連山、笈ヶ岳や大笠山等のピラミダルな山々に囲まれて山容が見劣りする野谷荘司山山頂、それ故か絶好の展望台で有った。感動を提供してくれたその山頂がどんどん遠くなっていった。

 新雪の窪んでいるのを遠くから見て古い足跡を見付けたと糠喜びをした。近づいて見ると大きく口を開けたクラックに新雪が乗っていただけであった。危ない、危ない。

 県境稜線にはオオシラビソや五葉松の枝ぶりの良い木があってシャッターチャンスを提供してくれた。山の神様のご機嫌がいい時に来られて良い写真が撮れた。

 三方岩岳が近くなった。この斜面を下り駆け登るだけと思うも尾根芯は雪庇のクラックが潜んでいた。石川側の斜面は傾斜が増してワカン履きでキックステップをするも滑りピッケルを使用した。体力の消耗が激しくてやけに喉が渇いた。

 三方岩岳山頂着、2021年の折りには岩にビス留めされた山名板プレートがかろうじて雪面から覗いており確認出来たが今回は完全に雪に埋まっていた。笈ヶ岳や大笠山がグーンと近くなって、野谷荘司と変わらぬ絶好展望台で記念写真を撮った。

 この先は断崖でありこれ以上は近寄れない。その先に人形山、三ヶ辻山、北アルプスの山並みが有った。この山頂で新しい踏み跡を見つけた。それも真新しい本日のもので馬狩登山口からのようだ、これでルートファインディングの手間が省け下山は楽が出来ると喜んだ。

 三方岩岳から一旦県境沿いに鞍部へ下り、ここで安全を期して再びアイゼンに履き替え岐阜横谷側斜面をトラバースして馬狩登山口へ続く尾根上に出た。

 白谷を隔てた登りのルートと県境稜線。今朝モルゲンロートに染まった稜線に自分達の足跡を残した歓び、今日の凱歌に大満足で足取りは軽かった。しかし、午後の陽射しが斜面の雪をグズグズにして足を取られると再びワカンに履き替えて下った。

 先行者のトレースにルート発見で手抜きが出来ると喜んだものの、千鳥足状で無駄が多く、時に大回りさせられた足跡に文句を言いながらブナ林の急斜面を下った。廃林道へ出ると残雪の縁にフキノトウを見つけて道草を食うゆとりも出てこの登山もほぼ終わった。

 このレポを作成中の3月22日WBCで日本チームの優勝が決まった。マウンドで帽子とグローブを投げ捨て仲間と輪の中で鼓舞する大谷選手の野球少年のような仕草やはしゃぎぶりに感動した。山登りは遊びだがあのように懸命であり続けたいと思った。完

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