【 一般山行 】 猪臥山 ( 1518.8m Ⅱ等△ ) 丹生 統司
北アルプスの展望台・猪臥山は県道90号猪臥山トンネル清見側に駐車場が完備され冬季も除雪が行われていた。危険個所もなく簡単に飛騨の冬山日帰り登山が味わえる絶好の展望台である。この日は晴天が予想され多くの登山者が山頂を賑わしていた。
- 日程:2023年2月5日(日) 晴れ
- 参加者:L.佐藤大、大谷早、後藤正、塩川眞、清水克、清水友、竹森せ、中田英、丹生統、林 旬、宮川祐、宮澤健、三輪唯、森川浩、若山和、体験参加1名
- 行程:猪臥山トンネル駐車地7:30-尾根取付き8:19-猪臥山山頂9:28~10:54-猪臥山トンネル駐車地11:56
- 地理院地図 2.5万図:猪臥山
当初は午前4時出発であったが「早すぎ!」との指摘で5時に変更したが「まだ早い」との意見もあった。が冬季は駐車地を心配せねばならない。猪臥山は手軽に冬山が楽しめる山として人気の山なのだ。県道は凍結して安全運転、案の定駐車場も既に半分以上埋まっており早立ちは正解だった。凄い人気だ、トレースはばっちり、ワカンやスノーシュー不要。
広い谷の中を塹壕のような踏み跡が案内する。地形図もコンパスも無用の日になりそうだ。すぐ前を行く15人ほどのグループに我が会の16名が追いつき長蛇の列の様相だ。
長い谷の行進が終わり落葉松林の尾根に取り付いた。主稜線まで高度で約250m登らねばならないが胸を突くような急登もなく足場は踏まれて堅くて歩きやすかった。
昨夜も降雪があったようで枝が雪を載せている。駐車地から1時間ほどでこの景色を手に入れることが出来る。アルプスに近い岐阜県民で良かった。
落葉松の綿帽子、綺麗だが温度が上昇するとバクダンを落とすので油断できない。休憩は必ず頭上を確認し真下を避ける。テントを設営する際もこのような下は避ける。
主尾根に到達しての休憩風景だが16名もの大所帯となるとつい登山道を占有してしまう。必ず他の登山者の通行の妨げにならないように道を広く空けて休んで欲しい。大所帯になると仲間内の会話などに夢中で他人への思いやりや気遣いがおろそかになりやすく注意が必要である。
高度を稼ぐ毎に周りの樹高が低くなって来たような、幹も細くなって来た様な気がする。時折ガスが切れて頭上に青空が覗いて天候の回復が実感出来た。
低木が雪の下に消えると距離感が掴めないのか斜面が思った以上に長く感じた。白い斜面越しの左奥に尾根が続き山頂だろうか人が見えている。
傾斜は強くない、ステップも大勢の人に踏まれ安定しており歩きやすいのだが中々高みに到達しない。このような時は前の方の足跡のみ機械的に追うと疲れが和らぐ。
斜面を登り切り主稜から山頂へ最後の登りである。どうやらパーティーのトップは山頂斜面の中ほどを越えている。もう一息で有る。
16人ものパーティーだと体力差で多少の時間差はやむを得ない、先に到達した仲間に励まされ山頂着。
午前9時28分、随分早い山頂着である。主稜線は緩やかに南西に下っている。雲が邪魔しなければ白山や石徹白、奥美濃の山々の展望が広がっていただろう。
残念だが御嶽、乗鞍や北アルプス方面は濃いガスがベールのように覆って眺望の邪魔をしている。しかし、時間はたっぷり有る、風もなく暖かい、休憩時間を長くしてガスの切れるのを待つことにした。
それほど広くない山頂に続々と他パーティーが登って来る。何せ冬山入門日帰りコースの有名山岳である。山頂標柱に人が居ない隙を狙い記念写真を早めに済ませた。
1時間を超える休憩中に時折ガスの切れ間に劒岳や立山、薬師岳らしい山塊が見えたが部分的で確信が持てない。その内ガスは切れると信じているが余りの長居は他パーティーに迷惑、重い腰を上げて下り出すとガスが俄かに動き出し白い峰々が顔を出し始めた。
ベールの下から黒部五郎、笠ヶ岳、大喰、中岳、南岳、北穂、涸沢岳、奥穂、前穂、西穂が顔を覗かせた。槍は笠と重なり見えない。北穂は滝谷の岩壁が雪をつけず真っ黒、涸沢岳と奥穂の間に白出沢が深く真っ直ぐ切れ込んでいる。もう少し近いと奥穂高ジャンダルムの鋭い飛騨尾根が確認出来るのだが・・・残念だが乗鞍、御嶽は未だベールの中だった。
一旦下降を始めたが道を空けて古川側の斜面に居座り北アの名峰に魅入った。下からはこの景色を求めて続々と登って来る、人気の山なのだ。席を譲って今度こそ下山についた。
猪臥山は深い谷も険しく細い尾根も急な斜面もなく山頂へ2時間ほどで達し360度の大展望が楽しめる。駐車場も完備されており冬山入門にもってこいの山で登山者は多かった。山頂まで踏み固められてスノーシューもワカンも無用の長物、踏み跡が山頂まで案内しており地形図とコンパスとで確認している登山者は一人も見なかった。
雪山に登る人が増えて嬉しいが事故が多発して社会に迷惑をかけている現実がある。令和3年岐阜県内の遭難者は107人、5割が60才以上で死亡も6割を占めている。また低山での道迷いと転倒が激増しているとのことである。
山登りは自由勝手であるが自己責任で有る。山頂に立って景色を眺めるだけの登山から知識や技術を習得する学びの登山をして欲しいと願う。地形図とコンパスで地形を把握し岩場や雪稜でアイゼンやピッケル等の道具を使いこなせば登山の幅が広がり楽しくなる。
写真のようなボサボサ雪だが大半の登山者はアイゼンを装着していた。猪臥山には深い谷も細い尾根も凍結した斜面等の危険地帯はなかった。道具は必要な場所で使用してこそ威力を発揮する。山の状況と体感によって道具使用の判断をするのも技術である。
剱岳や谷川岳は県条例で積雪期登山が制約されている。この頃は里山でもこれより先は登山禁止という看板を見ることがある。山歴など一切無視で一律禁止である。最近、金華山でも事故が数件報告されている。登山者が修練とまでは言わないが努力を怠り過ぎると登山そのものが禁止されないか心配なこの頃である。完
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