大垣山岳協会

初冬の空模様・鈴鹿石谷川ヨシ谷より仙ヶ岳南尾根周回 2022.11.28

仙ヶ岳

【 個人山行 】 鈴鹿・仙ヶ岳 961m(ヨシ谷~県境稜線~仙ヶ岳~南尾根下降) 丹生 統司

 鈴鹿は何処も登山者が多く道もよく整備されている。平日であっても人とすれ違わぬことは先ずないが、石谷川ヨシ谷は人の気配が消えて久しいと感じさせるコースで有った。

<ルート図>
  • 日程:2022年11月28日(月)
  • 参加者:丹生統、塩川眞、柴田悦、林 旬
  • 行程:石谷川林道白糸の滝駐車地6:54-南尾根分岐7:27-ヨシ谷出合8:10-P758m8:50-県境稜線着9:35-御所峠10:02-仙ヶ岳10:41~11:21-仙鶏尾根分岐11:35-滝谷不動12:37-駐車地14:07
  • 地理院地図 2.5万図:伊船

 SM嬢から南尾根から仙ヶ岳~御所平~船石~石水渓周回の同行を打診された。しかし小生の年齢と体力、日没を考慮してヨシ谷から仙ヶ岳、南尾根下降に変更いただいた。白糸の滝駐車場に着くや早々に出発、コースは半減したが辛く長い1日になると覚悟していた。

 廃林道は落石で狭くなっている個所も有ったが総じて歩きやすかった。約30分で南尾根分岐に着き最初の休憩をとった後に白雲の滝を左岸から捲いて石谷川を遡った。

 ハシゴが渓谷の壁に2つ離れてセットされていた。登山道が抜け落ちており一旦河原に降りてまた登り返し道に復帰した。花崗岩の渓谷は表土が大雨で流されると岩壁が現れて気の抜けない箇所が多い。

 ヨシ谷出合はうっかり見落としそうなほど水量も少なく杉林に隠れた小さい谷で有った。赤いリボンが無ければ見落としていただろう。ヨシ谷ルートは登山記録がないとメンバーから問い合わせがあった。国土地理院2万5千地形図に波線が引かれていたのでルートに決めただけである。最悪を考えてザイルを装備に追加しメンバーにはシュリンゲとカラビナの持参をお願いした。ルートに使えない場合は御所谷への変更も選択肢に入れた。

 ルートは古い踏み跡と赤リボンが谷沿いの斜面に続いた。ところが570m辺りで尾根に出ると踏み跡と赤リボンは南の谷沿いに下っていた。此処まで案内をしてくれた目印と別れ薄くなった踏み跡を追うと急登となって獣道の様相となった。時折見つける目印は古く白く色落ちしていた。急斜面だが藪がないのが幸いで木や根っ子を掴んでぐいぐい登った。おかげでザイルを使用することもなく順調に758mピークに立った。県境稜線まで一ヶ所20mの下降が有ったが一旦尾根通しに下ってトラバースすると簡単に鞍部に下りられた。

 途中で見つけた「ナメコ」人の気配のない所だとこういうご褒美がある。天然ナメコを食したことがないSM嬢に進呈したが翌朝に早速美味しかったと報告があった。

 落葉して見通しが良くなった緩やかな斜面、登山靴が埋まるほど深い落ち葉の絨毯は県境稜線まで続いた。当初は758mピークまではルートファイディングに時間をとられると覚悟していたが未だ9時半、順調すぎて嬉しい誤算であった。

 県境稜線に出ると北から吹きつける風が冷たくて防風着を羽織った。広い稜線は獣害だろうかアセビやシダ類以外の植物は少なかった。用土が流出しこぶし大の石が尾根を覆って植物には厳しい環境となっていた。南東に安楽川が白い筋となって流れ、その先に亀山市街が見える。冬のような黒くて低い雲が垂れて伊勢湾との境が判別しにくかった。

 足元のシダは冬枯れして踏むとカサカサ音を立てた。行く手に仙ヶ岳と南尾根の岩峰下降路が鋸の刃を逆さに立てたように見える。徐々に高度を落す険しそうな岩峰の岩肌が威圧的であった。メンバーに南尾根をどうして下降に使うのかとメールで問われた。南尾根は険しくともルートは明瞭である。しかし、ヨシ谷はルートが不明瞭と思われ的確で安全なルートファイディングの時間ロスを考慮するなら登りに使う方が有利と答えた。

 県境稜線は小さな弧を2回描いて御所峠へ下りた。御所谷コースと書かれた案内札は地べたに置かれていたが踏み跡は落ち葉に埋もれ隠れており利用頻度は少ないと思えた。

 山頂には3人パーティーが居てその後2名が登って来た。いづれも小杜峠からであった。やはり鈴鹿の山は平日でも山頂に人が絶える日は無いと思った。

 山頂での昼食休憩中に西の空が俄かに黒くなり県境稜線の山並みに迫って来た。冬の雪雲の襲来に似ていたが風の冷たさが厳寒期とは違っていた。それでも急な雨を警戒して早めに山頂を後にした。

 仙鶏尾根との分岐、仙ヶ岳東峰に立つ「仙の石」にて記念撮影。いつ倒れるかわからないような不安定に見える「仙の石」両手で相撲のツッパリの要領で「ドスコイ」と押してみたが動かなかった。暫くは倒壊しそうにないと確信した。

 ルートは峰越えが多く幾つかの岩場の急下降やザラ場のスリップに気を使ったがメンバーの技量が安定しておりホローは全く必要なかった。起伏を幾つも越えるのは息が切れたが徐々に順調に高度を下げた。家内に今日は遅くなるかも?と言って出たが早く帰れそう。

 滝谷不動明王は登山道から2分ほどの距離に有って花崗岩をノミで削った中に安置されていた。嘗ては仙鶏尾根から野登山を結ぶ修験の道だったのだろうか、真新しい花が生けられて厚い信仰がまだ続いていると思われた。

 クラックに階段状に足場が切られた岩の中ほどと4mほどの頂付近にも石仏が安置され花が生けられていた。亀山市街が見下ろせる絶好の展望台となっており街の守り尊なのだろう。我々も下山の無事を祈って手を合わせた。

 滝谷不動からイタハシ谷上部のガラ場の下降はウンザリするほど長くて疲れた。角張った岩の隙間を落ち葉が隠して何度かストックが挟まれバランスを崩しそうになった。それでも転倒せずに下山出来たのは先ほどの滝谷不動の御加護かもしれない。計画段階では帰宅が遅くなる覚悟をしていたが14時過ぎには駐車地に着いた、ありがたや。完

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