【 一般山行 】 烏帽子山 ( 1,,242m Ⅲ△ ) 清水 克宏
烏帽子山、烏帽子岳という名の山は全国に数多い。
そのうち越美山地の烏帽子山(1,242m)は、まさに烏帽子の形の山頂を持ち、周辺の山深い里で親しまれてきた山だった。
しかし、高度経済成長期に製紙会社がホハレ峠から山頂近くまで林道をのばし皆伐。
そのため1975年刊の『ぎふ百山』に入らなかった経緯がある。
その後50年あまり経て、山上は背を越すチシマザサに覆われ、主に積雪期に登られる山となった。
この山に11月27日(日)、無雪期に椀戸谷を詰め、日帰りで登頂する計画が立てられ、無雪期の山頂に立ちたくて参加させてもらった。
沢登りの後、ヤブ漕ぎが連続し、想定所要時間は10時間。晩秋なので、蒸し暑さがなく見晴らしがいい反面、日没が早いので、時間的にゆとりがなく、緊張感のある山行になりそう。
今回は、後藤リーダーはじめ6名のメンバーが参加。最近入会され、ヤブ漕ぎ初体験の人もおられる。
4:30集合、坂内村川上集落から夜叉ヶ池~三周ヶ岳登山口に向かう池ノ又谷林道に入り、神岳ダム堰堤近くに駐車。
沢靴を履き、ヘッドライトを点けて6:20出発、椀戸谷沿いの廃林道を歩きだす。
6:55、椀戸谷最奥の橋から入渓。
椀戸谷はしばらくは広く、右岸、左岸と渡渉しながら遡行する。
入渓してしばらくで、すばらしいトチの巨木に出会う。
だんだん谷は狭く、傾斜を増していく。水量はあまりなく、両岸をよじ登っていく。
沢が苔むす岩の間を縫うようになると、源頭部が近い。
8:00沢靴から登山靴に履き替え、いよいよ激ヤブ地帯の登高が始まる。
やや左手の急斜面をよじ登ると、だんだん藪が濃くなる。
崩れきった廃林道と交差、その上が平状になった場所で迷いやすそうなので、なるべくこまめに赤テープを付けていく。
立ち止まり、なるべく高い場所に付けようとやっていると、メンバーを見失いがちなので「ちょっと待って!」を繰り返す。
9:40稜線に出る。後藤リーダーが下見の時付けていった赤布を確認。
稜線の中心はヤブが濃く、やや北寄りに獣道があるので、なるべくそれを利用する。
残雪期に神岳ダム方向からたどられる尾根が、烏帽子山と高丸をつなぐ稜線と交差するところの烏帽子山と1161mピークとの中間にあるピークは、通称「ジャンクションピーク」を10:15通過。
烏帽子山の烏帽子型の頭が真正面になる。まだまだ激ヤブは続く。
山頂が近づくと、獣道は消えてしまう。登山者と違い、獣は登頂を目的として歩いているわけではないから仕方ない。トップを変わってはヤブ漕ぎし、ようやく11:05山頂に立つ。
なかなか無雪期に拝むことは困難な三角点の標柱にタッチし、全員で万歳。
北側、揖斐川の支流西谷を挟んで千回沢山、不動山を真正面に拝む。
徳山ダムが完成し、旧徳山村が全村離村したため、この見渡す限りのエリアに人口はゼロという日本有数の秘境地帯の山々。
地味だけど、無雪期にはなかなか拝めない風景に、感慨無量。
少し西に目を転じると滋賀・福井・岐阜県境稜線。こちらも、今春土蔵岳から能郷白山までテントを背負ってのべ4泊6日単独行したので思い出深い。
帰りも厳しいので、感慨に浸ってばかりもいられない。
高丸との間の鞍部に向けてふたたび激ヤブ漕ぎ。
稜線からの平状の斜面、登りは山頂を目指せばいいけれど、戻りは谷への下降点があいまいでルートファインディングが難しい。
往路で、しつこいくらいに付けた赤テープで、なんとか迷わず降りていけた。
もし手抜きしていたら、かえってロスタイムが出たはず。
源頭まで下り、再び沢靴に履き替える。
下りながら振り返れば、沢の合流点に4mほどの落差の滝があった。椀戸谷では一番大きな滝だという。
トチの大木まで下ると、もう廃林道も近い。何とか日没まで余裕をもって下ることができた。
ヤブ漕ぎ初体験のメンバーも、今までにない経験でなかなか楽しかったと言ってもらえ良かった。
整備された登山道、好展望の山頂の山もいいけれど、もくもくヤブを漕いだり、沢を遡行したりといった登り方も経験すると、登山の奥行きが広がるはず。
このような登山スタイルを経験するには、やはり山岳会に入会するのが近道でしょう(PR)。
<登山記録> (-:車、…:徒歩)
- 日程:2022年11月27日(日) 晴
- 参加者:L.後藤、内牧、酒井、清水、中田、山本
- 行程:大垣(集合)4:30―坂内川上ー神岳ダム(駐車)6:20…(廃林道)…橋(椀戸谷入渓)6:55…源頭部(登山靴履き替え)8:00…稜線9:40…ジャンクションピーク10:15…烏帽子山山頂11:05~11:30…源頭部14:05…橋15:10~15:20…神岳ダム15:50―大垣
- 地理院地図 2.5万図:美濃川上、広野
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