大垣山岳協会

ふるさとの山・由布岳(豊後富士) 2022.10.01

由布岳

【 個人山行 】 由布岳 ( 1583m Ⅰ△ ) 丹生 統司

 ふるさと大分県には九重山や祖母山、傾山などの名山が多いが帰郷してもトンボ返りが多く機会を逃していた。やっと報告出来る由布岳は温泉都大分県の別府市と湯布院町に緩やかな裾野を落とす別名豊後富士と呼ばれる秀峰で九州では人気の山である。

<ルート図>
  • 日程:2022年10月1日(土) 晴れ
  • 参加者:丹生統、他2名
  • 行程:正面登山口8:05-正面・東ルート分岐8:20-合野越8:50-マタエ10:25-西峰10:50-東峰12:00-日向越13:40-正面・東ルート分岐14:35-正面登山口14:45
  • 地理院地図 2.5万図:別府西部・日出生台

 ルートは正面登山口から西峰山頂経由で「お鉢回り」をして東峰へ登り東ルートを下降し日向越から正面登山口へ周回するコースである。正面登山口そこは少し黄緑色に色付いた緩やかな草原を夏の終わりを告げる風が抜けていた。同行は弟夫婦である。

 長閑な草原が尽きると溶岩台地をアセビやナラなどの広葉樹が覆い岩は苔むしていた。

 溶岩帯から樹林を過ぎ低灌木やススキの原を九十九折の道が上へ導いた。振り返ると手前に奈良の若草山に似た飯盛ヶ城1067m、左奥は雨乞岳1073m、右は倉木山1155mと城ヶ岳1168mが重なって見えていると思われる。最奥に九重連山が見えるはずなのだが雲が隠しており残念だ。右下は由布盆地である。

 見上げると山頂岩壁群が覆いかぶさるように立っている。急斜面にミヤマキリシマが張り付くように覆っていた。花期でないのが残念だ。

 湯布院の市街が真下に見える傾斜地を登りきると東峰と西峰の鞍部に出た。この賽の河原のような鞍部を「マタエ」と言うようだ。マタエの意味は解らない。

 マタエで右に行けば東峰へ、左は西峰である。ほとんどの登山者は東峰へ向かっていた。我々は人気の少なくなった道を西峰へ向かった。

 西峰への途中から見たマタエ(鞍部)と東峰である。西峰と比較すれば幾分傾斜は緩いようで岩場らしきものは見えない。東峰は3mほど標高が低く三角点はないが登山者は圧倒的に西峰より多い。

 西峰へは直ぐに鎖場の岩となって直登が始まった。鎖は新しくしっかり固定されて有り危険は感じない。またホールド、スタンスとも豊富であるが高度感はある。

 岩場が終わると岩峰が現れ傾斜が落ちた。道は岩とヤブの間に続いており山頂は近いと思われた。背後の城ヶ岳が随分低くなった。湯布院市街が真下に見える。

 西峰1583m到着、登山者が3名ほど居たが東峰の賑わいに比べれば少なく静かだ。湯布院の市街が真下に見えていたが遠くの九重や祖母、傾山は雲の中だった。

 Ⅰ等三角点、点名・油布岳、標石柱は歯槽膿漏状態で欠かされた角はセメントで補修されていたが哀れで悲しくなった。

 10分ほどの休憩で東峰と西峰の間にある火口湖跡を周回する「お鉢回り」をスタートさせた。ミヤマキリシマなどの灌木は風雨で叩かれ枝がトゲのように鋭くチクチクして素手で触れると痛かった。

 火口湖跡を真下に見て急傾斜地を下降した。踏み跡はしっかりしておりルートを外すことはないが火山特有の浮石やザレ場の急下降でスリップに気を使った。

 岩稜帯は岩を直接越えたりヤブの境まで降りて捲いたりと幾通りかを力量に応じて選択出来た。火口湖跡が深く高度感が有って油断できない箇所も有った。

 西峰山頂と火口湖跡の急斜面を振り返った。斜面中央右にコースの踏み跡がくねった白い筋となって見える。

 東峰山頂が近くなって来たが目前にまた岩稜が通せんぼしているみたいだ。

 東峰山頂1580mである。山名標柱と祠が有って山頂の威厳を保っていたが三角点はない。
東に鶴見岳1374,6mとその先に別府湾が見えるはずだが濃いい雲が隠していた。

 大勢の人が山頂とそこから一段低い尾根の平坦地で休憩をしていた。別府湾方向が濃い雲で遮られており湯布院市街を見下ろして昼食をいただいているようだった。

 東峰から北に15分ほど引き返して3人が腰を下ろせる尾根の平地を捜して遅い食事をした。下山は東コースと決めていたので更に分岐迄行くといきなり急下降が始まった。

 尾根は尾根といえないほど急であった。バッサリ切れ落ちた所には鎖が付けられており高度感に負けなければ安全は確保されていた。

 緊張の下降中に心を和ましてくれた「ヤマラッキョウ」恥ずかしながら岐阜の山では見たことが無くて教えていただいた。九重山系には多いようだ。

 急傾斜地は火山特有の丸い小石の浮石が多く落石や捻挫の心配が有って足元に注意が必要だった。それを過ぎて傾斜が落ちると大石が斜面に点在していた。

 日向越を過ぎて西へのトラバースが始まると迷路のような「溶岩帯」となった。湿気で苔むした岩の間を縫うようにして谷筋を幾つも横断したが水は全て地下に潜っており確認出来なかった。

 イメージでは下り気味のトラバースで正面ルートへ簡単に合流出来ると思っていたが幾つか上り下りを繰り返し長く遠く感じた。小屋の屋根が見えるとやれやれホッとした。

 登山口傍にマユミがたわわに実を付けていた。寒さが増して落葉すると実は赤みを増して一際綺麗に目を引くだろう。

 ふるさと大分県は温泉都である。湯量日本一の別府温泉、もう一度行きたい温泉で人気の湯布院、下山後の楽しみを求めて車を走らせた。完

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