大垣山岳協会

播隆の修験地を訪ねて、相川山・川戸 2022.08.19

明神山

【 個人山行 】 相川山・川戸 ( 点名・藤川 905.5m Ⅲ△ ) 丹生 統司

 2015年1月、石田三成陣跡の笹尾山から尾根を北上して相川山、川戸を経由し県境稜線から伊吹山へ登り弥高尾根を下降した。この時、川戸905.5mを越えて西に少し下った樹林の中に「播隆上人修行屋敷跡」と書かれた石碑を見つけた。当日は地吹雪状態で立木も石碑も白い雪を纏って霞んでおり幻想的であった。勉強不足でこの地が播隆の修験地であることを知らず遺跡でも発見したような感動が有った。今回は明神山より、その石碑を往復した報告である。上写真の左双耳峰が相川山、その2つ奥の峰が川戸である。

<ルート図>
  • 日程:2022年8月19日(金) 晴れ
  • 参加者:丹生統(単独)
  • 行程:明神の森駐車地9:30-明神山9:50-相川山11:25-川戸12:30-標高900m台地13:00~20-播隆石碑13:30-川戸13:40-相川山14:35-明神の森駐車地15:55
  • 地理院地図 2.5万図:関ヶ原

 明神の森公園の展望所からの濃尾平野、名古屋駅のツインタワーが見えてその奥に伊勢湾、百々ヶ峰の左奥に御嶽山が金華山の右離れた奥に恵那山が雲の上に浮かんでいた。

 雨乞神事が行われた山頂、点名・明神(658.7mⅢ等△)標石の文字面が北向きである。

 林道合川線から望む相川山、伐採で南面の見通しが良くなっていた。植樹跡には獣害柵が張りめぐらされていた。

 鈴鹿の最北端霊仙山から御池山、藤原岳の山並み、その手前にボンテン山、勢州峠、一本杉の関ケ原・上石津境界の山々、更に手前に松尾山(関ケ原の役での小早川の陣跡)が見えている。

 合川林道を歩行中に出会った美人、ヒメアカタテハと思われる。綺麗だった。

 小沢峠、その昔、関ケ原町と春日村はこの峠を挟んで交流が続けられていた。30数年前のこと、我が家からバイクで明神山を越えて春日村川合まで来た時にタイヤがパンクした。近くの商店にパイク預け歩いて帰ろうとした、実は財布を忘れていた。店主は1万円札を出して「バスで揖斐駅へ出て帰れ」と諭してくれた。善意に甘えたが、遠い昔より峠の往来で醸成された信頼がまだ生きていた、先人に感謝をし、関ケ原住人で良かったと思った。

 点名・藤川村(781.7m Ⅳ等△)住所は関ケ原町大字玉字西滝ヶ洞、滋賀県境から200mも岐阜県関ケ原町に入っているのに滋賀県の藤川村が点名とは納得できない。

 三角点から西に200m、ここが最高点(790m)の相川山である。山名板などの人工物は無く、立ち木に赤テープが括られていた。この山の250mほど南東側下に「雨乞い岩」があって古来より高度成長期頃まで雨乞神事が行われていた。

 疎林の中を「川戸」山頂を目指して県境を北に辿る。獣の往来が激しいのかよく踏まれておりヤブは無い。ナタを持参したが無用の長物となった。

 振り返ると三角錐の相川山が樹間に見えていた。明神の森公園駐車場から見ても格好いいが反対側からでも容姿は変わらない。

 相川山から北上して標高800m辺りで林道に出た。2015年に来た時にも有ったと思われるが記憶にない。これだけの広さならば雪で覆われていても林道と判断できたはずだが、

 林道の途中から「川戸」の山頂部が見えた。滋賀県側は自然林、春日側は明神山から檜の人工林が続いていた。耕地に恵まれない春日は林業を生業にする方が多いからであろう。

 標高830mで林道は「川戸」山頂部を春日側に大きく迂回しだした為尾根に取り付いた。

「川戸」山頂着、三角点は檜、リョウブ、クリの木に囲まれていた。赤目印が括られていた。

 点名・藤川(905.5m Ⅲ等△)標石文字面は西向きであった。

 播隆碑を捜し踏み跡を追ったが北への尾根に誘い込まれた。やがて赤目印が有り林道に降りたので西へ向かい尾根との高低差の少ない所から標高900mの台地に登った。

 標高900mの台地で昼食を頬張りながら樹間から伊吹山を眺めた。やはり、伊吹は高く、ヤブ山とは違った威厳があった。この台地が播隆の修験地と見当をつけて林道から尾根に上がり詰めたが違っていた。記憶では「川戸」山頂から近くだったはずで休憩を終えると忠実に県境を引き返した。

 休憩地から県境稜線を「川戸」山頂側へ8分引き返した所に石碑は有った。尾根筋は疎林で有ったが屋敷跡周辺は杉の木が幾本かまばらに立っていた。小さな平地が確保されており確かに建物が有ったのだろう。石碑には屋敷跡と記されていたが修験の寝起きに使用した小さな僧房程度だったのではないだろうか。雪の中で見た時のような幻想的な雰囲気は無かった。

 石碑には「池谷ヶ峰」の文字が見える。これが本当なら「川戸」の山名は「池谷ヶ峰」かもしれない。ただ「池谷ヶ峰」の山名は格好良すぎで現代的すぎるような、やはり滋賀県坂田郡藤川村字川戸の字名「川戸」が似合っている。完

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