大垣山岳協会

ブナの美林を行く・横山岳 2022.04.01

横山岳

【 個人山行 】 横山岳 ( 1131m Ⅱ△ ) 丹生 統司

 雪の季節は短い、限られた時間の中で行きたい山は多いが今季も幾つか残してシーズンを終えそうである。横山岳北面のブナの美林も雪床が消えてしまっては美しさが半減する。近いからと後回しにしていたら4月に入ってしまった。余呉奥地の多雪地域でも雪解けのスピードは思いのほか速くかろうじて山頂近くに残っていた報告である。

<ルート図>
  • 日程:2022年4月1日(金) 晴れ(強風)
  • 参加者:丹生統(単独)
  • 行程:余呉菅並東バス停前7:15-点名・桑樹谷9:25-北尾根合流10:00-横山岳山頂10:40~11:25-西尾根分岐11:30-余呉菅並東バス停前13:15
  • 地理院地図 2.5万図:中河内・美濃川上

 雪代で増水した高時川と横山岳の西面である。我が家から見える伊吹山がみるみる黒くなったが余呉の奥地は例外と思っていたがここも雪解けは早かった。

 「なかがわら橋」のたもとに駐車して出発した。菅並集落の風景が好きで何度か訪れているが空き地が目立つようになって寂しい。

 菅並は標高210mほどであった。それから約550mほど高度を稼いでも周りにちらほらの雪しか現れない。高価な冬靴が泥で汚れてもったいなく夏靴にすればよかったと後悔した。尾根でスダジイと思われる老木に目を止めたが他にも巨木が多かった。

 標高800mを越えるとやっと尾根に雪が現れた。雪面は堅く歩きやすかったが藪の無い地面が出て居ればそちらの方を利用した。

 尾根の途中にある点名・桑樹谷856.83mⅢ等三角点石柱は運よく覗いていた。

 北の方向に白い山が見えた。おそらく上谷山だろうと察しがついた。県境の山はまだ雪が多く残っていた。

 北からの尾根に合流するとブナの巨木が一気に増えた。北からの風が強くブナの木々にぶち当たってゴーゴーと唸った。強風で叩かれた雪はカチカチでツボ足には滑って歩き辛い。アイゼンを履いていても爪が数ミリしか入らないと思えるほど固かった。

 大きなブナに魅せられて近寄ると尾根の対岸が見えて遠く東の方向に蕎麦粒山のピラミダルな山容が一際目を引いた。

 北の方向に目を転じると県境の白い山並みが続いていた。左から上谷山、中央は左千方と三国岳と三周ヶ岳が重なって右端は高丸である。

 北尾根に合流したところから山頂までブナの美林が続き、その林の切れ間に蕎麦粒山など東面から北方の山並みが見えていた。

 所々にハッと目を引く老木や巨樹があって横山岳の北面のブナ林は見飽きない。

 左から三国岳、奥の高いのが三周ヶ岳、中央に高丸、烏帽子山が見えて背後に一際白く白山が見えていた。烏帽子山の右に能郷白山が有ってそのまた右が蕎麦粒山である。

 老ブナに引き寄せられついシャッターを押す、幹の肌が苔むし乾燥し荒れてガサガサだ。厳しい年月を絶えたが雪の重みで幹は折れても枝を芽吹かせて生きていた。

 尾根は緩やかになって気持ちのよいブナの林を南に進む。山頂は近い。

 高度を増し山頂が近くなると高丸と烏帽子山の背後に白山が鮮明に見えるようになった。右端は能郷白山である。

 山頂の高みから見た上谷山と三国岳と尖って見えるのが三周ヶ岳である。

 山頂の山名標柱は30㎝ほど覗いていた。山頂の物置小屋は1m以上出ていた。風除けにしたいと思ったが物置周囲は風で雪が削られて1mほど凹み雪壁状の穴になっていた。

 山頂から南に斜面を少し下り強風を避けられる休憩場所を捜した。リョウブ等樹木の根元が雪解けで平になっており腰を下ろすと風は気にならず陽当たりは良かった。伊吹山が正面に見えてその奥に霊仙山等の鈴鹿の北部の山並みが霞んでいた。

 今夜は会の理事会の開催日である、長くは居られない。11時半前には腰を上げた。下山は西尾根を下る計画である。余呉湖を眼下に見、その向こうに琵琶湖を見て山頂を後にした。

 山頂から一旦10分ほど引き返し西尾根の斜面を下降したが残雪は直ぐに無くなった。しかし踏み跡はしっかりしており目印も多かった。尾根の右に七頭ヶ岳から妙理、大黒山が見えていた。

 尾根は急下降の連続で雪解け後の斜面の土は湿気を含んで滑りやすく注意が必要であった。足元を見ると腐葉土を分けてカタクリが春を知らせるように芽を出して陽を浴びていた。

 下降は急傾斜地を一気に駆け下りたのだが、下ることに夢中になり過ぎて標高373mにある点名・菅並Ⅳ等△石柱は確認するのを忘れてしまった。集落に降り立つと樹齢700年幹周り8.2mの滋賀県指定自然記念物の巨大ケヤキが迎えてくれた。

 春の雪解けは思いのほか速く少ない残雪に物足らなさも多少あったが山頂北面のブナの美林は観察できた。春の陽の下でゆっくり鑑賞したかったが冷たい強風に追い立てられた。来季は会の仲間にこの美林を春の陽気の中で案内したいと思っている。完

コメント