大垣山岳協会

落とし物を捜しに・トガス 2022.03.20

トガス

【 個人山行 】 トガス ( 1076.8m Ⅲ等△ ) 丹生 統司

 この日は金糞岳北尾根を登るつもりで有った。ところが坂内川上の浅又林道へ進入しようとハンドルを左に切ったが林道は除雪が全く手つかずの状態だった。イビデンの貯水池までは除雪が有ると確信していた。国道から歩くようでは日帰りは難しい、お粗末な計画であった。ソバズルが「トガス」にしませんかと言った。斯くしてトガスに変更した。

<ルート図>
  • 日程:2022年3月20(日) 曇り時々晴れ
  • 参加者:L.丹生統、後藤正、柴田悦、中田英、三輪唯、山本知、吉田千、林 旬
  • 行程:発電所駐車地7:10-導水施設7:45-トガス山頂10:00~11:00-発電所駐車地13:25
  • 地理院地図 2.5万図:美濃川上

 トガスは毎回取り付きの道路法面を立ち木を掴み強引に斜面に這い上がる。杉の植林帯の急登では倒木の踏み抜きに注意し雪が切れると滑りやすい落ち葉の斜面が厄介だった。

 導水管落水施設横でワカンを装着、根雪がしっかりしておりワカンの埋まりは少なかった。

 トップは交代で務めたが女性がリードすると速くてついて行けない。

 彼方に早くも山頂が見える。実はソバズルは1月にスキーに来ていて落とし物をしたらしい。この樹木が多い中を滑りウェストポーチとシャベルの柄を落としていた。斯くして落とし物捜索山行となった。

 揖斐川町坂内は熊が多い。大きなブナが有ると必ず爪痕を見る。此のブナを上り下りした熊は大物のようだ爪痕が深い、獣にもメタボがいるようだ。

 こういう落書きは後々迄恥を晒すことになることを覚悟すること。全国の同姓氏に申し訳ないと思わないのか。

 雲が切れて青空が覗き暖かくなると思われたが晴天は長続きしない。直ぐに雲に覆われると寒くなった。今朝大垣は雲一つない天気で春山を満喫できると信じていたのだが。

 蕎麦粒山が前方に見えている。先月26日にトレースを残した時の白さは既に無くしていた。あの時は雪庇に注意が必要であったが既にその心配は消えているようだ。

 雪庇は此のところの雨や寒のゆるみですっかり落ちており安心して歩ける。天気が良ければ雪中散歩が楽しめる所である。

 振り返ると金糞岳が長い北尾根を坂内川上まで延ばしている。本来ならあの尾根の高みを歩いていただろうに、メンバーには申し訳ない。後で聞いた話では、今期は多雪で各町村は除雪費が予算超過に陥り生活道路を優先し他の道まで手が回らぬようだ。

 やはり蕎麦粒山は?風山と並ぶ奥美濃の鋭鋒である。ピラミダルな山容に惹かれつい立ち止まってしまう。雲が厚く流れが速い、晴れ間が長続きせず気温が上がらなかった。

 それにしても落とし物が見つからない。当初は周りの雪が溶けて物は雪上に残るので簡単に見つかると思った。若い頃、奥伊吹スキー場から残雪のブンゲンに登った帰路にリフト沿いに下って雪上に浮き上がっていた10円100円のコインを沢山拾った記憶が鮮明に残っている。ソバズルのスキー技術を鑑みれば樹木の多いこの付近での転倒で落としたと・・

 急傾斜を登りきり山頂着と思いきや雪稜が現れてニセ山頂に騙され気力が萎えそうになる。

 ヤレヤレ山頂到着、三角点は2m下の雪の中、山名板は3mほど高いブナの枝に括られていた。先ずは万歳を三唱して見晴らしの良い所を求めて北へ移動した。

 ランチタイムを展望の良い所でと移動中に北東に能郷白山が見えている。この付近で充分展望は良いと思うのだが先導するソバズルは歩を止めない。

 北に白い山が見えている。県境稜線上にある金草岳だろうか、ソバズルはまだ歩を止めずドンドン先行する。絶景を求めてランチタイムの場所は中々決まらない。

 ランチタイムを過ごすその場所は尾根が北と西に分岐する所でブナの古木に囲まれた所で有った。北風を避けて斜面に腰を下ろして約1時間を過ごした。

 トガスに来ると思い出すのは昭和58年11月に酒井昭市、高木泰夫の両師を烏帽子山1242.2mへ佐竹前理事長他と案内したことである。ホハレ峠からトガス北側の廃林道を延々歩き茂津谷の源頭から登頂した。酒井先生はこの時既に病魔に侵されており途中で断念した。長く岐阜岳連の理事長や文部省登山研修所講師を務められ著書も多く県を代表する岳人であった。駆け出しの頃、岳連行事に参加して拝顔する機会は多かったが個人山行を一緒したのは最初で最後となった。平成3年3月に鬼籍に入られ薫陶を受ける機会を失った。

 下山途中で町内美化デーの為に遅れていた林さんが登って来た。我々よりも30分速いペースで有る。一緒に下ると思いきや山頂まで行くという。小さい身体の何処からパワーが湧いて来るのだろう。我が会の女性は凄い。

 帰りは何とか1品でも捜し当てたいと更に念入りに目を皿にして下った。ソバズルは最後の斜面は記憶をたよりに我々と離れて単独で降りて行った。導水管横の急斜面を藪を掴んで発電施設西の坂内川に架かる橋のたもとに降り立つとソバズルと合流した。彼は見事にスコップのシャフトを捜し当てていた。金糞岳へは登れなかったがトガスに転戦した意味はあった。完

地理院地図

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