大垣山岳協会

蕪山 南尾根から奮登の記 2022.02.11

蕪山

 奥美濃の名峰の一つ、蕪山には過去2回登っている。23年前の夏に一般登山道から。昨年3月初めには山頂の真東の岩本洞の奥から支尾根筋を登った。尾根筋に広がる広葉樹二次林の冬枯れ姿が忘れがたく、今回は岩本集落から北上する尾根を登った。願い通り、雪の中にまばゆく輝く木立すだれを堪能できた。例年にない多雪で雪潜りに苦しみ、山頂まで6時間半を要した。幸せは苦しみの先にある。

【 個人山行 】 蕪山かぶらやま ( 1068m Ⅱ△ ) 鈴木 正昭

  • 日程:2022年2月11日(土)
  • 参加者:鈴木正(単独)
  • 行程:
    • 10日(木)自宅⇒国道41号⇒国道418号⇒国道156号⇒美濃市役所前⇒県道81号⇒国道256号⇒県道52号⇒岩本集落の路側で駐車・車内泊(標高310m)
    • 11日(祝)駐車地7:00⇒7:10北尾根取り付き⇒7:30掘割り道⇒10:15点名岩本(731mⅣ△)10:40→12:05登山道出合→1:30蕪山2:10→3:15往路での登山道出合い点→登山道降下→4:50登山道入口⇒5:00県道52号⇒5:25駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:上ヶ瀬

 同行を約束していた板取在の山友が直前に腰を痛めたため、単独行となった。前夜泊の車内で寒さに震えたが、朝になると青空に雲一つなく、東側の空は朝日を浴びて金色に輝いていた。絶好の条件を確信できた。

 岩本集落の北端部の廃屋の前を上がる。積雪20㎝ほど。すぐ、蕪山の最南端の尾根筋を上り始める。スギの人工林内。雪は少ない。シカ道が網目のように付いているが、人の道はない。前日の夕方、居合わせた地元のNKさんにお聞きした。蕪山登山道は1.5㎞ほど北側からついているが、昔はここ岩本からも道がついていなかったか、と。「少し上までは作業道があっただろうが、山頂までの道については聞いたことがない」という。

 登り始めて20分後、尾根の背に出ると、掘割り道らしいV字地形が現れた(写真①)。雪で埋まっているので、左右の縁を歩いて、石碑などの人工物を探したが何もなし。

写真①

 なだらかな尾根上の雪は次第に深くなる。尾根の左右からスギの人工林が迫るが、尾根筋はアカマツやコメツガ、コナラなどの混交林(写真②)。明るい日差しが届き、アセビ、シキミ、クロモジなどの低層樹がにぎやかだ。ただ、積雪は1m近い所もあり、ワカンを装着。それでも、ワカンごと腰まで潜るところも多くなる。

写真②

 点名岩本は小さな丘に上にあった。勿論、三角点石は雪の下に隠れている。広葉樹二次林に囲まれ明るい。やっと、腰を下ろし一息ついた。ここから小ぶりな尾根を真北に上がる。風もなく明るい広葉樹中層林。その間に一本のアカマツの大木が腰を折り曲げて青空に立ち上がっている。(写真③)よく来たな、と歓迎しているのかな。

写真③

 ワカンの雪潜りに苦しみながらも、明るく無風の二次林すだれの尾根筋歩き1時間半。やっと「21世紀の森」からの登山道に合流(標高約870m)。そこに犬を連れた男女登山者が休んでいた。遅くなったのでここで引き返すという。ペットを登山に同伴するのはよくないことですよ、と警告しようと考えたが言い出せなかった。

 積雪1m余。登山者たちのトレースがしっかり付いていた。途中で重いわかんを脱いで、デポして深いトレースの溝の中を進む。葉を落とした広葉樹の木々の穂先が威勢よく青空に向かって突き上げる(写真④)。見ていると心が洗われるようだ。途中単独の登山者5人が山頂から降りてきた。予想外の人出に驚く。

写真④

 広々とした山頂(写真⑤)に着くと、四方全開さえぎるものなし。天空の眺望台。すぐ先の真北に板取・杉原から滝波山に続く長大尾根の連なりが見える(写真⑥=中央最高部が滝波山)。2015年4月に山仲間と濃霧の雪中をあるいた記憶が懐かしい。その右奥は白雪を纏う白山。東側に御岳、南方に高賀山とタカネの黒々とした峰が座っていた。山頂に居合わせた江南市在の夫婦登山者と歓談。ここから見える山々はすべて登った山ばかりだよ、とついほら話。真面目に驚いてくれたので、後日山行報告を送るよと約束した。

写真⑤ 蕪山山頂
写真⑥ 中央最高部が滝波山

 下山では往路を戻る気迫は消えて、途中で登山道に入った。以前は奥牧谷コースなど3本の登山道があったが、今は奥牧谷左岸尾根を降りるコースのみになった。急な尾根筋を何度も何度もジグザグ下り、誰もいないガランとした運動公園に降りた。すべてヒノキなどの薄暗い人工林内の中。往路のまばゆく輝く広葉樹林の光景が目に浮かんできた。県道52号を歩き、駐車地に着いたころ、夕暮れが迫っていた。

 帰宅後、山頂で夫婦登山者に連絡先を書いてもらったメモを捜すが見当たらない。紛失したのだ。ほら話がから話となった。

<ルート図>

発信日:02/14

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