月報「わっぱ」 2022年1月(No.482)
【 冬山訓練 】 焼岳 ( 2455.5m Ⅱ△ )(未登) 平木 勤
- 日程:2021年12月18日(土)~ 19日(日)
- 参加者:L.西村洋、丹生統、平木勤、藤野一、山本知、吉田千
- 行程:
- 12月18日(土)(曇り) 中之江駐車場5:00=中ノ湯8:30~9:20-尾根取付き10:05-テン泊地(1975m地点)13:20
- 12月19日(日)(雪) 泊地7:20-広場8:15-最高到達点(2275m)11:00-泊地12:00~13:00-中ノ湯14:10=大垣
- 地理院地図 2.5万図:焼岳(高山7-4)
12月18日(土)(曇り)
中之江駐車場5:00=中ノ湯8:30~9:20-尾根取付き10:05-テン泊地(1975m地点)13:20
週末には大雪になるという予報に今回の山行がどうなることやら、と不安を抱きながら一週間を過ごした。中止もやむを得ないかな、と思ったがその連絡はなく当日を迎えた。
寒い朝、積雪するという予報ははずれ全員無事そろって時間通りに出発。道中、郡上市に入る辺りから左右に積雪が見られるようになり白鳥からは路面にも雪がつきだした。
高山市街地辺りも雪を纏い、平湯に至っては厳冬期の様相だった。安房トンネルを抜けたところから中ノ湯へ向かう道はまだ除雪されておらず車高の高い僕の車でも底を擦った。かなりの降雪があったようだ。
中ノ湯への到着は予定よりやや遅くなった。早速準備して出発。しばらくは先行者のトレースがあったが、それも車道をショートカットして尾根に取り付くところで終わった。
尾根の取付きは結構な急登。そこに先週辺りのものかと思われるトレース跡がわずかなへこみとなって続く。それを追っていくがそこにかぶる雪は高度を上げる程深くなっていく。先頭の西村リーダーが奮闘して進んでいく。途中からはラッセル訓練を兼ねてメンバーが交替でラッセルを受け持つ。僕も久し振りにワカン深雪ラッセルをさせてもらった。しかし、すぐにきつくなり、体力の衰えを知る結果となった。
ラッセルはきついが、雪の降り積もった樹林は目を楽しませてくれる。すっくと延びるブナの巨木には驚きの声があがっていた。
時間が経つと時折森に陽が射し込み、明日への期待が湧く。それを励みにラッセルを続けたものの標高点1972mを過ぎた辺りで体力的にきつくなってきて、ここでテントを張ることになった。先ほどから吹き抜けていた風もここでは弱く感じられた。
今回は時節柄、全員がソロテント。各々が雪面を均してテントを張る。慣れないメンバーはベテランの指導を受けながらの設営となった。設営場所の選定から雪の踏み固め方、張り綱のやり方まですべてが勉強となったことと思う。
外は寒さがきついため、食事もそれぞれのテント内で摂る事となった。パーティなのに寂しいな、と思ったが、意外やテント越しの会話が弾み楽しいひと時となった。
夜が更けて、用足しに外に出てみるとスポットライトのような光が樹間から差し込み、何?と驚いた。満月を迎えた月光だった。それが森を舞うダイヤモンドダストを光らせ思わぬ光景を作り出していた。自然からのこの贈り物に心を癒された。
12月19日(日)(雪)
泊地7:20-広場8:15-最高到達点(2275m)11:00-泊地12:00~13:00-中ノ湯14:10=大垣
久し振りの冬山テン泊、しかもソロなので寒さが心配だったが新しく購入したマットや重ね着の工夫が功を奏して温かい中で休む事ができた。暗い中で起き出して外に出ると雪が舞っていた。既に数センチの新雪が積もっていた。
今日は、テントはそのままにして焼岳のピークを目指す予定。夕べと同じくそれぞれに食事を摂りザックの準備をして出発時間を迎える。しかし、ここでベテランと初心者の段取りの違いが出てしまった。
まずシュラフを片付け、荷物をパッキングしやすいようにまとめて、それからお湯を沸かし食事。その後、必要なものだけザックに入れて出発する、という手順ができていなかったようで、下りてきてからのパッキングに手間取っていた。寒冷下でのコンロの不調でお湯が沸かなかったのもこれに拍車をかけたようだ。
予定より若干遅れて出発。テン泊地からしばらくは比較的平坦な地形が続くがそこに積もった雪は深く昨日に引き続ききついラッセルが続く。「広場」の手前にある沢地形から尾根に取り付くことになった。が、その取付きからしてかなりの急斜面。雪をストックで押さえ込みながら足場を作って登ろうとするもののサラサラの雪は何時までたっても踏み固まらない。一苦労も二苦労もしてようやく登り抜けて斜面が緩くなった、と思ったらまた先に急斜面が現われた。その段階で西村リーダーは次のメンバーにラッセルを交替。この先、この繰り返しで高度を上げていくが、足場の決まらない登高にいたずらに時間を費やした。
雪が降り続く中で格闘を続けていくと徐々に樹林が薄くなり、標高を上げているのが分かる。開けた斜面からの眺望は晴れていればいかほどかと思われるが今日はそれを望むべくもない。ただひたすら雪面を見てラッセルを続けていく。タイムリミットの11時が刻々と近づき、すでに山頂は諦めざるを得ないことを全員が理解していたが、少しでも高みへ向かいたい気持ちがわずかばかりの高度を稼がせる。
立ち止まって不図振り返ると、後方に登ってくる人影が見えた。ラッセル泥棒か、とやや嫌な感じもしたが二人組の彼らは見る見る追いついてきた。溌剌とした若者達だった。聞けばG大山岳部の一、二年生。そこからは彼らが快くラッセルを引き受けてくれた。交替した途端進行速度が吃驚する程速くなった。この分ならひょっとして、という淡い期待感も芽生えた。が、やはり現実はそれほど甘くはない。
標高2250m辺りで広々とした無木立の急斜面が広がった。スキーなら気持ちよく滑降できそうな斜面だ。そこを若者に引きずられながら登りきると、特徴的な地形の場所に出た。湾曲した尾根の向こうに霞んで見えるピークは標高点2318mのようだ。せめてあそこまで、と思ったものの既にタイムリミットだった。樹林帯を抜け風が強くなってきていることもあり、ここを終了点とすることとなった。残念ではあるが今回のラッセルは良い経験であったとともに良い思い出となることだろう。最後にここまで引き上げてくれた学生達に感謝したい。
登りでは苦労したが雪山の下山は速い。1時間程でテン場へ戻る。各々テントをたたみ、パッキング。ここでベテランとの段取りの違いが出て、手間取るメンバーもいた。
テン場からのトレースは既に何組かの登山者に踏み固められていており、中ノ湯までは1時間ちょっとで下る事ができた。下山後はちょっと熱めのお湯につかり疲れを落とした。
久し振りの冬山テン泊山行は自分の今の力を知る良い経験となったし、何よりも楽しかった。参加メンバーも良い経験や思い出になったのではないだろうか。これを糧に良い山行を続けていければと思う。
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