【 個人山行 】 武尊山 ( 2158m Ⅰ等△ ) 丹生 統司
武尊と書いてホタカと読む、北アの穂高ではない。百名山に興味が薄く知識の乏しい私にはブソンかタケルとしか読めない。麓の武尊神社の由緒によれば日本武尊の東征故事によると伝えられる。その神社名を冠しコースに修験者の名残「行者ころげ」と呼ばれる難所が有り嘗ての山岳信仰の山だということはソコソコ険しい山だと理解した。
- 日程:2021年9月25日(土) 曇り後一時雨
- 参加者:L.丹生統、阿部育、後藤正、田中恵、田中善、名和妙、成瀬八、山本知
- 行程:武尊神社駐車地6:10-剣ヶ峰山分岐7:05-手小屋沢分岐8:15-沖武尊10:40~11:10-剣ヶ峰山12:35-剣ヶ峰山分岐15:30-武尊神社駐車地16:15
- 地理院地図 2.5万図:藤原湖・鎌田
昨夜21時大垣を出て名神、中央道他の自動車道を走り武尊神社の駐車場で夜明けを待った。ところがトイレ完備の駐車場、登山ポストをやり過ごして次々に車が通り過ぎて行くが知らない土地で有り後を追うのは我慢した。武尊神社鳥居の傍に道祖神と思われる石彫りがあり頬を寄せ合って肩を抱き合う姿がほほえましく写真に収めた。
駐車地から地道を40分歩いたところに空き地があり満車状態だった。更にそこから15分の所が剣ヶ峰山分岐で武尊山を登った後に剣ヶ峰を周回して此処に降りる計画だ。
ブナの幹が真っ直ぐ上に延びて枝も素直に自由に上に伸びていた。我々が奥美濃で目にする枝の分岐が多く横向きにくねっているのとは趣が違った。
岩が出て来た、日頃の練習の成果を試せるチャンスである。とはいえ昨夜までの雨で道はぬかるみ岩は濡れて滑りやすく気は抜けない。
斜面の急登を我慢して登り切り手小屋沢避難小屋分岐にて休憩。ポツポツ雨が落ちて来たが森林に遮られて雨具は我慢できそうだ。
ネズコの天然大木が幾本も有って自然自らの整姿には人間の庭師など到底及ばないと気付かされる。そして谷から湧き上がるガスが一層自然の芸術を引き立たせた。
鎖場が出て来た。いよいよ「行者ころげ」なのだろうか。雨を遮る森林が切れここで雨具を着けた。岩は濡れて滑りやすい、気を抜かぬように注意した。
天気が良くて岩が乾いて居れば何ともないのだが一度滑ると一歩一歩がより慎重になって時間が過ぎて行く。身体を岩から離して捜せば足場は有るのだが・・・
雨は登るにつれて途切れなく降って来た。岩を越える度にこれで終わりと思う間なく次が現れた。凹角状のクラックが多く中に入ってもがく人が多かった。
岩場が終わると緩やかな尾根となってネズコ等の高木が消えて周りの景色が急に変わった。小雨の中シラビソの林が幻想的に浮かんでいた。
足元にゴゼンタチバナの赤い実が綺麗だった。頭上にはクロマメノキが有り黒い実は酸味が効いて酸っぱいはずだが汗を掻いて疲れた身体のせいか少し甘く感じた。
初めての味についつい手が伸びて黒い果実を口に運ぶ、美味しく食べる様子に釣られて引き返し味見に参戦。
尾根に出て低木の紅葉が目立つようになった。写真はモミジだがナナカマドは実を赤くつけて葉も赤く染めていた。
雨が強くなって周りの景色が全く見えない。しかし紅葉のトンネルを抜けると山頂へ最後の登りの予感がした。
狭くはないが広くもない山頂には2名の登山者が居た。雨が降っており寒い山頂だった。山頂から剣ヶ峰山側へ下り雨を避けられる森林帯で昼食休憩を、という声もあった。しかし知らない土地で周囲が見渡せない中での行動は慎重であらねばならない。先ず体温保持に雨具のズボンを着けることを指示、そして小腹を満たして内から身体を温めた。
Ⅰ等三角点、点名・武尊山、石柱は平成6年9月に交換され一等の文字は左からであった。
武尊山から剣ヶ峰への周回はいきなり急下降で始まった。ガスで全くの視界不良だが先頭は道標を信じてドンドン下って行った。吊り尾根の周回をイメージしていたが余りに急な下降に地形図とコンパスで方向を確認した。方向は確認できたが等高線が老眼で詳しく読み取れず立ち止まると置いていかれ続図がアバウトになった。
剣ヶ峰山2020mに到着、狭い山頂だったが他の登山者が1名だけだったのでガスに捲かれて周囲が見えないときに有効なコンパスによる方向確認講習を行った。
剣ヶ峰山から駐車場迄の急下降はこれまでよりもっと苛酷で延々と続いた。立木を掴み岩を足場にして木の根にぶら下がり泥の斜面を転ばぬ気遣いで下った。雨はほぼ上がっていたが靴もズボンもドロドロだ。
木の根はいっぱいの罠を仕掛けており餌食になって尻もちを搗く人が続出しザックカバー迄泥で汚した。雨具のズボンをはいていなければえらいことになっていた。
下山後は登山口近くの民宿での宿泊を決めていた。山で汚れた垢を落とし綺麗な衣服に着替えが出来ただけでも至福である。冷たいビールで今日の登山にささやかな乾杯をして美味しい料理に舌鼓を打った。ふかふかで清潔な布団で見る夢も山小屋とは違っていた。
朝起きてしばらくすると雨が落ちて来た。大垣では土砂降りの雨で会の山行は中止したとメールで知った。我々は今日、谷川岳一の倉沢まで行き出合から一の倉の岸壁を仰ぐ予定であったが雨の中では衝立岩も滝沢スラブ見えないと判断して止めた。
今回メンバーの大半は3年前の飯豊連峰遠征に一緒した仲間である。百名山完登の最後の一山をお手伝いした。正直、飯豊連峰は知っていたが具体的な山名までは知らなかった。彼女たちがルートを調べ小屋の手配も行った。今回も同様で「武尊山」の存在すら知らなかった。個人山行は普段の山行と違う発見が有ったり教わったりして得るものが多い。自分達で行きたい山を調べ目標にする。その登山実践の手伝いが少しだが出来た。
登山後は毎度のことだが食欲が増して民宿の朝食が美味しくてお代わりをした。食後ゆっくり休憩し午前9時に帰垣に着いた。完
ルート図
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