大垣山岳協会

北ノ俣岳、薬師岳 2021.09.19-20

北ノ俣岳(上ノ岳)

月報「わっぱ」 2021年10月(No.479)

【 秋山山行 】 北ノ俣岳 ( 2661.3m Ⅲ△ )、薬師岳 ( 2926.0m Ⅱ△ ) 小栗 敦子

  • 日程:2021年9月19日(日)~ 20日(月)
  • 参加者:CL.後藤正、SL.丹生統、大谷早、奥田恭、小栗敦、加藤美、村田美、山本知
  • 行程:
    • 9月19日(日)(快晴) 三城交番西駐車場2:00=各務原IC=東海北陸自動車道=飛騨清見IC=(飛越トンネル)=有峰林道東谷料金所=折立登山口7:20-点名・青淵8:45-太郎平小屋10:55~11:45-太郎山12:00-北ノ俣岳13:30~14:00-太郎平小屋15:15
    • 9月20日(月)(晴れ時々曇り) 起床5:00~太郎平小屋6:05-薬師峠6:30-薬師平7:00-薬師岳山荘7:40-薬師岳山頂8:40~9:00-薬師平10:05-太郎平小屋10:55~11:35-点名・青淵13:05-折立登山口14:15=有峰林道東谷料金所=飛越トンネル=東海北陸自動車道=各務原IC=大垣20:30(解散)
  • 地理院地図 2.5万図:有峰湖(高山10-1

9月19日(日)(快晴)
三城交番西駐車場2:00=各務原IC=東海北陸自動車道=飛騨清見IC=(飛越トンネル)=有峰林道東谷料金所=折立登山口7:20-点名・青淵8:45-太郎平小屋10:55~11:45-太郎山12:00-北ノ俣岳13:30~14:00-太郎平小屋15:15

 台風14号の影響を受けて、2泊3日を予定していた秋山山行は太郎平小屋をベースに1泊2日で北ノ俣岳と薬師岳を目指す計画に変更となった。宿泊先の調整やルート変更でお世話になったリーダーに、参加メンバーは感謝のお礼を丁寧に述べて大垣を出発した。

 東海北陸自動車道飛騨清見ICを過ぎて猪臥トンネルの手前あたりで小雨になったが、有峰のゲートを通過する頃は朝もやの中に好天の兆しが見え始めた。折立にある広大な有峰駐車場はすでに満車状態で、私たちは一番奥の臨時駐車場にかろうじて止めることができた。登山靴に履き替えて500mほど先の「有峰薬師岳登山口」に徒歩で向かう。

 登り出しからいきなりの急登。朝露で濡れた登山道を滑らぬように慎重に樹林帯を進んだ。出発から約1時間半、点名・青淵( 1869.9m Ⅲ△ )に到着。立派なベンチが誂えてありガスの切れ間から剱岳が少し見えて心が躍る。

 森林限界を超えると、太い丸太木を製材した頑丈で幅の広い木道が整然と設置してあるが、高山植物の植生保護が本来の目的らしい。夏を惜しむかのように、コケモモやミヤマリンドウの紫色が木道の脇を彩っていた。午前10時55分、太郎平小屋に到着。小屋の真正面は「北アルプスの貴婦人」とも形容される広大で優美な薬師岳が、両手を広げたように私たちを出迎えてくれた。

 部屋で昼食を済ませ、サブザックを整えて北ノ俣岳に向けて出発。途中、太郎山( 2373.0m Ⅲ△ )で記念撮影。その先快晴の空の下、広々とした稜線を進む。緩やかに登って行く草原状の湿地帯は池塘が点在している。

1日目、池塘が点在する湿地帯を行く

 黒部川の源流を挟むようにそびえる峰々を眺め、北アルプスのど真ん中に居ることに気持が高揚する。

 頂上手前に西に寺地山に向かう神岡新道への分岐があるが、登ってきた道をそのまま直進。絶景のパノラマコースを満喫しながら標高2,662m、北ノ俣岳(上ノ岳)頂上に13時30分到着した。

 頂上から眺める槍ヶ岳はこれまで見た中で尤も鋭利な刃先で天空を突き刺すかの如く、その角度と言い、切れ味抜群のフォルムであった。大喰岳、中岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、黒部五郎岳を目の前に、風も無く静かな山頂でいつまでも飽くることなく眺めて過ごしていたかったが、リーダーの号令で下山開始。

 大小さまざまな池塘の水面に空の青が映り、チングルマの穂綿に癒されながら、太郎平小屋に帰着。シーズン中の山小屋と言えばウナギの寝床だが、今のご時世それも遠く懐かしい。

 夕食前、部屋でくつろいでいると地震の揺れが3回ほどあり緊張が走った。その頃下界では小槍の一部崩落のニュースを伝えていたようだが、幸いにも太郎平の小屋では夜の帳と共にいつしか深い寝息が聞こえ始めた。

<ルート図> 1、2日目 登山口~太郎平小屋(往復)
<ルート図>
1日目、太郎平小屋~北ノ俣岳

9月20日(月)(晴れ時々曇り)
起床5:00~太郎平小屋6:05-薬師峠6:30-薬師平7:00-薬師岳山荘7:40-薬師岳山頂8:40~9:00-薬師平10:05-太郎平小屋10:55~11:35-点名・青淵13:05-折立登山口14:15=有峰林道東谷料金所=飛越トンネル=東海北陸自動車道=各務原IC=大垣20:30(解散)

 午前5時起床。朝食後、薬師岳に向けてサブザックで小屋を出発。朝露で湿った木道を50分ほど進むと、少し開けたところに太郎平キャンプ場があった。水場とトイレの設置が整っており色鮮やかなテントが賑わいを見せていた。樹林帯を過ぎてガレ場を慎重に登ると、ハイマツと堅牢な石垣が目印の薬師岳山荘に到着。眼下には、昔平家の落人が隠れ住んだという有峰集落を湖底に飲み込んだ、人造の有峰湖が静かに水を湛えていた。薬師岳避難小屋とケルンを通過し、午前9時、標高2,926mの薬師岳に到着。

2日目、薬師岳の稜線を行く

 山頂には祠が祀られており、黄金色に光を放つ立派な薬師如来像と山の神が扉の奥に鎮座していた。祠の脇の梵鐘をひとつ撞いて手を合わせたあと、標柱を囲み記念撮影。

2日目、薬師岳頂上で参加者一同

 薬師岳は奈良時代から平安時代には修験者が山岳修行を行う霊場として、立山周辺の山から南下して薬師岳を越えて有峰に入り、鍬崎山を経て下山するという厳しい入峰路があったといわれている。入峰路の裏付けになっている銅錫杖頭が、国の重要文化財として立山博物館に所蔵されているそうなので是非一度見てみたいものだ。

 修験者の修行に思いを巡らせているとリーダーから出発の声。南側からガスも湧き出し名残惜しみつつ頂上を後にした。薬師岳山荘に下った折、山荘の横に「国特別天然記念物薬師岳圏谷群」の石碑があった。三つのカール(金作谷、中央、南稜)が薬師岳の東斜面に並び黒部川上の廊下に落ち込んでいるが、これらは洪積世氷河の浸食作用によってスプーン状に削られたものだ。ナナカマドやダケカンバが紅葉し始め、この先さらに赤や黄色のグラデーションが深秋のカールを彩ることだろう。

 太郎平小屋に戻り、皆で登頂の喜びに浸りながら外のテーブルで昼食。折立への下山ペースも快調で、全員無事に登山口に到着。来た道と同じ飛越トンネルを通り、順調に車を走らせ予定より1時間早く大垣に帰着した。

 今年の秋山山行は、リーダーの適切な判断によって好天に恵まれ、山小屋をベースに危険な箇所も無く、サブザックで北アルプスの2座に登頂できた。今回のように天候次第で快適な日もあれば、予想外の雨に打たれる時もある。日頃から体を鍛え、「春夏秋冬」登る山の状況に応じて、持ち歩く水や必要な荷物の軽量化を工夫し今後の山行に活かしたい。

<ルート図> 2日目、太郎平小屋~薬師岳

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