大垣山岳協会

初秋の北ア・北ノ俣岳~薬師岳( №2 薬師岳編 ) 2021.09.19-20

薬師岳

【 秋山山行 】 9月20日 2日目
太郎平小屋 ~ 薬師岳 ( 2926m Ⅱ△ ) ~ 太郎平小屋 ~ 折立登山口
丹生 統司

 薬師岳は立山雄山の阿弥陀如来に対し薬師如来像を祀り信仰を集めた。古く麓の有峰集落人々の厚い信仰心に守られて来たが昭和34年ダムの完成によって集落は湖底に沈んだ。現代の薬師如来像は大山寺と観光協会の保護下で薬師岳山頂の薬師堂に納められている。

<ルート図>
  • 日程:2021年9月19日~20日(日~月・祝)
  • 参加者:L.後藤正、SL.丹生統、大谷早、奥田恭、小栗敦、加藤美、村田美、山本知
  • 行程:【2日目 薬師岳 】9月20日(月 祝・晴れ時々曇り ) 太郎平小屋6:05-薬師峠6:30-薬師平7:00-薬師岳山荘7:40-薬師岳山頂8:40~9:00-薬師平10:05-太郎平小屋10:55~11:35-点名・青淵13:05-折立登山口14:15
  • 地理院地図 2.5万図:薬師岳

 山荘の朝食風景である。メニューは忘れてしまったがご飯とみそ汁はお代わりOKである。この日は薬師岳を往復し帰垣の予定であり喫食5分前から並び一番であった。

 小屋前で準備中に太陽が黒部川を挟んだ対岸の赤牛岳の方から上がった。陽射しが草原のショウジョウスゲ等の植物群の朝露を蒸発させて薬師岳が霞んで見えた。

 薬師峠へ向かい50mの下降、峠はテント場に指定され50張以上のカラフルなテントがひしめいていた。新鮮な水場と綺麗なトイレも完備されておりいいテント場と感じた。これなら¥2000気持ちよく払いたい。

 ナナカマドが紅葉を始めていた。もう1週間もすれば真っ赤に色づくだろう。秋の澄んだ空気とナナカマドの紅とダケカンバの黄の競演が目に浮かんだ。

 ミヤマリンドウである。タテヤマリンドウかと疑ったが室堂で見たタテヤマリンドウは色が薄く花弁に斑点の文様が有った。

 薬師平から昨日登った北ノ俣岳が見えて隣に黒部五郎岳も見えていた。なんとなく上空の雲が秋を感じさせる。

 薬師平のショウジョウスゲやイワショウブ草原の南の彼方に槍ヶ岳の穂先が見える。その手前左が鷲羽岳でコルの右から三俣蓮華岳と双六岳である。

 足元にチングルマの綿毛が朝露を一杯含んで秋を演出していた。チングルマは綿毛だけでなく赤く色づいてシラタマノキと共に紅葉も素晴らしい。

 木道の脇にシラタマノキ、標高を上げるとこれの紅葉が足元を赤く染めて綺麗だった。

 シラタマノキの紅葉、チングルマも紅葉していたが赤みがシラタマノキに及ばない。

 彼方に槍ヶ岳の尖峰と右に抜戸岳の大ノマ乗越から秩父岩が急峻な壁に見える。太郎平から見ているときは滝谷かと?それにしては槍から離れすぎており気になっていた。高度を上げると笠ヶ岳と吊尾根で結ばれており抜戸岳と確認出来て解決した。

 賽の河原のような歩き辛い砂礫の乾燥した道を薬師岳山荘を目指した。広い尾根は積雪期登山でガスに捲かれると方向を見失いやすく下降が困難になると思われた。

 薬師岳山荘に到着、足元に紅葉したシラタマノキが綺麗だった。小屋周りはハイ松のみで水の確保が大変と思われた。しかし緩斜面の広い尾根は悪天候時に使命を発揮するだろう。

 薬師岳避難小屋跡、昭和38年1月の愛知大学山岳部員の大量遭難を契機にこの避難小屋が建設され、富山県警には山岳警備隊が発足した。さらに昭和41年に剱岳周辺での積雪期登山規制の条例が施行された。剱岳の冬山登山は剱岳の積雪期経験者以外の一般登山者の立ち入りが規制されたのである。

 避難小屋跡の有るピークから岩尾根をトラバース気味に登山道が続いていた。尾根が細くなり足元の岩が大きくなると北アルプスの山を登っていることを実感した。

 大きな岩が重なった高みが山頂で薬師如来像を祀った社と少し離れて山名柱が有った。大きな山容の薬師岳であったが山頂は以外にも狭かった。ガスが湧いて辺りを包み北方の立山や剱岳、黒部川を挟んだ対岸の針ノ木岳等後立山の山々を眺めることは出来なかった。この夏の鹿島槍・五竜岳の景色をメンバーに見せたかったのだが・・・残念。

 社の石垣東の隅にⅡ等三角点(点名・薬師ヶ岳)が有った。石柱の南面側が大きく欠損してセメントで補修され哀れで有った。三角点近くの岩に腰を下ろして金作谷カールを見下ろし休憩した。カールに残雪はなくガラ場となって黒部の深い谷に消えていた。

 太郎平小屋に引き返すと先ず預けていた荷物を回収、リーダーはメンバーを慮って長めの昼食休憩を指示していた。黄金色の草原を秋風が吹き抜け植物群の穂を揺らす光景も見納めだ。去りがたい感傷をこらえて折立登山口へ向け下山を開始した。

 折立登山口に着くまでに何組のパーティーに抜かれたことだろう。懸命に歩いているつもりだが若者の歩行にはついて行けない。悲しいことだが現実は認めねばならない。しかし自分達のペースを守ればそれなりに成果を残せることがこの秋山で実証された。

 来年の夏山はより多くの方が参加できるベースキャンプ(テント、小屋利用)での定着山行でそれぞれが自分の技術と体力に応じた登山が出来る取り組みを考えたい。完

ルート図(2日目)


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