大垣山岳協会

年寄りの冷や水、御在所岳・籐内壁前尾根 2021.08.25

御在所岳

【 個人山行 】 御在所岳・籐内壁前尾根 丹生 統司

 連日の雨で暇を持て余していた。運動不足による筋力の低下が気になる毎日である。その老人を気遣って山の誘い、場所は御在所籐内壁、若き日の道場である。

  • 日程: 2021年8月25日(水) 曇り
  • 参加者: L.中田英、丹生統
  • 行程: 前尾根取付き9:20-ヤグラ手前コルザイル解除12:30
  • 地理院地図 2.5万図:御在所山

 大汗を掻きヘロヘロでテスト岩に着いたが先ず藤内沢に眠る「高見」に手を合わせた。前尾根取り付きのクラックは濡れて飴色に光っており難しそうだ。嘗てあった残置ハーケンは抜かれたのか支点がなく中田はカムをセットして安全を確保、乗越した。トップの「登ってよし」の合図でクラックに取り付いた。

 垂壁クラックは被り気味でスタンスが小さく滑りそうで手首をこじ入れズレ落ちを防いだ。左手の腕時計が岩とこすれキズが気になったが構っていられない。クラックを抜けるとリッジへ、昔は木登りして岩に移ったが枯れたのか無くなっていた。このリッジへの足場が遠かったが腕力で強引に乗越すと藤内沢側が切れ落ちて高度感は昔のままだった。

 リッジ、フェース、クラック、チムニーと前尾根は多彩なクライミング技術習得の道場である。しかし久方ぶりのクライミングは体力の消耗が激しく直ぐにヘロヘロとなった。

 トップは花崗岩特有のクラックにルートを選び順調にザイルを延ばす。凹角登攀は中に入り過ぎると苦しくなって身動きが制約される。若い頃を思い出し思い切って身体を外に出して何とか要領を駆使して体力の消耗を防いだ。クライミングがこれほど重労働で体力を必要としていたとは、老いた身体をしみじみ実感し自分に鞭を打った。

 久方ぶりのクライミングでヘロヘロになってP6峰の上で2度目の休憩をした。そこから懐かしい一の壁や中尾根のツルム、バットレスを見下ろした。此の体たらくでは上にザイルが延びていてもあそこを攀じるのは到底無理だろう。前尾根をノーザイルでごぼう抜きしていたといっても信じてはもらえまい。

 大岩を重ねたような花崗岩特有の前尾根の上部である。P3峰とヤグラが見えて左に切れ落ちた谷は藤内沢で上部に鋸岩が見える。3ルンゼはその奥である。

 尾根の岩は完全に乾いて花崗岩のフリクションを楽しめるはずなのだが体力の消耗が激しく楽しんで登るゆとりはない。クライミングは楽しかったはずなのに・・・

 幹がほとんど白骨化したヒノキが一本、盆栽の「ジンづくり」のような生命力に感心した。そして自分に重ねた。

 リッジを登る。右のスラブは我々が若い頃に「6級」と呼んでいたルート。何度か挑戦した記憶はあるが一度も完登していない。現代のクライミングシューズと違い昔はビブラム底だった。見るとルート沿いにピンが3本ほど打たれていたが昔は無かった。その精神力の負荷を含めて当時の最困難6級のグレードが付けられたのだろう。

 P3峰とヤグラのコルでヘトヘトになってザイルを解いた。久方ぶりの登攀はとにかく疲れだらしなく座りこむ、ヤグラを登る気力はとうに失せていた。ここで昼食休憩としたが飲み物は喉を通過するのだが固形物は水と一緒に流し込んだ。

 コルで休んでいると1パーティー3人が登って来た。この日、籐内壁は我々と彼等だけだった。彼等もバテバテと大声でぼやいており少し救われた気がした。彼等がヤグラを登るというので見学することに、結局1時間半の大休憩となった。

 下降ルートは前壁ルンゼの上部を浮石に注意して急下降、昨日までの雨でヌメった所があり気が抜けない。滑ったら40mの前壁ルンゼを大ジャンプとなる。前壁の下に降り立つとヤレヤレ一息ついて、北谷の水で顔の汗を流して裏道登山道に合流した。完

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