大垣山岳協会

雨の尾西谷 2021.05.16

尾西谷(国見岳)

【 個人山行 】 奥美濃 粕川上流尾西谷おさいたに 平木 勤

  • 日程:2021年5月16日(日)
  • 参加者:平木 勤、他1名
  • 行程:白山神社8:40-入渓9:00-大岩屋10:00-登山道10:50-国見峠11:10-白山神社12:10
  • 地理院地図 2.5万図:美束

 日曜日に雨だったら尾西谷へ行きませんか、という誘いが知人から入った。予報では日曜日は確実に雨だ。尾西谷なら丁度いい感じだろう。そもそも「雨だったら尾西谷」とブログに書いたのは他ならぬ僕自身なのだ。

 予報通り、当日は朝から雨模様。道中、見た粕川は増水して濁流となって恐ろしげだった。だが最上流部となる尾西谷では問題ないはずだ。

 尾西集落の白山神社の脇に駐車。奥に伸びる林道を歩いていく。雨に誘われたのか沢ガニが道を横切った。写真を撮ろうと追うとハサミを上げて威嚇してくる。その小さい目でしっかりとこちらの姿を捉えているようだ。

 林道終点から奥の堰堤を越えていく。塞き止められて出来た池は枯れ木がところどころに立っている。知人はそれを見て「大正池みたいだ」とこちらが望んだ通りのリアクションをしてくれて、心の内でほくそ笑んだ。

 左岸に続く薄い踏み跡を辿っていく。植林帯だが、途中に栃の巨樹が立ち目を楽しませてくれる。

 何時ものように谷が狭くなった所で入渓。いきなり迎えてくれる滑滝は増水で迫力ある姿を見せていた。

 知人はクライミングが得意で沢好き。雨の中でも積極的に流芯を攻めていく。僕もその後を追いかける。雨のためか水は意外と冷たく長く浸けていると痺れそうだ。

 何時も関門のようだ、と感じる滝も水量を増して迫力がある。正面勝負は水圧に跳ね返されそうだ。脇の水量が少ない所を越えていく。知人は水圧に負けず、左から右上するシャワークライミングを試みる。

 関門の滝を越えると現われるのは布団のような滝が段々になった滝群。
雨の中でしっとり感が増している。覆い被さるような新緑と相まって息をのむ美しさだ。

 630m二俣を左に進むとすぐに現われる5m滝は周りの草木が洗われて以前にくらべてスッキリした姿になっている。直登するのはいやらしい滝だが知人は難なく登ってきた。

 いよいよ、この沢最大の見所の長く美しい滑群が姿を現す。雨で水量が多く美しさを増している。知人も感嘆の声を上げていた。この長い滑を遡行していくのは何時来てもワクワクする。

 基本的には、初級者向けの沢だが登り方によっては上級者も十分楽しめる。斜度のある滑は岩で言えばスラブのようなもので、登るにはそこそこのテクニックがいる。知人は持っているテクニックを発揮して次々に滑滝を越えていく。冷たい水流を浴びながらも楽しそうだ。

 延々と続く滑、滑、滑。初めて訪れた時の感動が蘇る。そして僕も幾つかの流芯を攻めた。水流に抗いながら越えていくのが楽しい。

 数百メートルにわたる滑が終わると巨岩帯が現われる。こんな小粒な沢に似つかわしくない岩がゴロゴロと横たわる。その一角には巨大な岩屋がある。中で数人が楽々と過ごせそうな岩屋だ。知人は「修験道者でも住みそう」とこれまた期待通りの反応をしてくれた。

 巨岩帯を越えると階段状の滝が現われた。そして、その次に現われたのが知人曰く「ボスキャラ」、の「天空の滝」。

 一見、簡単に登れそうだが流芯はつるつるで難しい。右サイドはクラックを利用して登れるがレベルが高い。左サイドは比較的簡単に登れる。それでも上部は微妙で難しい。知人は右サイドを苦労して登りきった。僕は左サイドを簡単に登る。

 4mの滑滝を越えると最後の二俣。ここを左に取れば国見岳直登だが草薮がうるさい急登なので最初に登ったきりだ。今回も行く気はなく右俣を進んで登山道を目指した。

 入渓から2時間弱で登山道に上がる。もう何度も訪れている尾西谷なので入渓前は食傷気味に思っていた。しかし、いざ遡行してみるとやっぱり楽しいいい沢だ。気軽でコンパクト、その上美しい。知人も満足のようだった。

<ルート図>

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