大垣山岳協会

春の雪上講習、野伏ヶ岳・薙刀山 A 2021.04.10

野伏ヶ岳

【 春山雪上訓練 】 野伏ヶ岳 ( 1674.28m Ⅲ△ )、薙刀山 ( 1647.2m Ⅲ△ )

  • 日程:2021年4月10日(土) 晴れ
  • 参加者:
    • A班 CL丹生統、佐藤大、藤井利、藤井眞、宮沢健、村田美
    • B班 PL.中田英、SL.後藤正、清水克、平木勤(スキー)、藤野一、吉田千
  • 行程:
    • A班 中居神社7:05-和田山牧場跡8:30-ダイレクト尾根乗越9:55-野伏ヶ岳11:30~13:10-和田山牧場跡ビーコン講習15:00~20-中居神社16:30
    • B班 中居神社6:30-和田山牧場跡7:45-1230m推高谷09:10-薙刀山10:45~11:00-野伏ヶ岳12:25(A班合流、以降同上)
  • 地理院地図 2.5万図:願教寺山

総括・A班報告 丹生 統司

 例年恒例の春山講習は岐阜県山岳連盟の理事会と重なり、コロナ禍もあってテント泊を止め4月10日(土)の日帰りで実施することにした。それで、A班は野伏ヶ岳ピストン、B班は薙刀山から周回で野伏ヶ岳で合流することとした。時間的なこともあって訓練としての滑落停止やアイゼンワークは出来なかったが両班ともピッケルとアイゼンのコンビネーションを実践形式で学ぶこととなった。

<ルート図>

 上在所中居神社下の駐車場に着くとB班、薙刀山の周回組が石徹白川の橋を渡ろうとするところであった。我々も支度を終えて早々に跡を追った。和田山牧場跡への林道は大半が雪がなくショートカットの場所も限られていた。牧場に着くと先ず写真タイムとなった。

 牧場を始めて訪れる人も何度も来ている人も四方を山に囲まれたこの景色に魅了される。

 アイゼン、ピッケルの使用未経験者がいたので敢えてアイゼンとピッケルのコンビネーションを実施することにした。踏み跡を離れダイレクト尾根目指して急傾斜に取り付いた。ストックからピッケルに持ち替えると安心感が全然違うことを身体で感じた。

 今朝がたの冷え込みで雪は堅くアイゼンの爪が良く効いた。訓練の為、敢えて急傾斜を選んだが乗越付近は更に傾斜が増していた。クラックによる段差の壁状乗越はアイゼンの前爪を蹴り込みピッケルのピックを打ち込み越えるコンビネーション技術をマスターした。

 ダイレクト尾根に着いたが春の雪解けは早く藪があちこちで立ち上がっていた。山頂の南斜面は熊笹が覗いており藪漕ぎが心配された。

 それでも北東尾根の向こうに芦倉、丸山から続く別山への山並みが一際白く目を引いた。標高1400m辺りで藤井夫妻は所用が有る為時間切れ、此処で引き返した。

 ダイレクト尾根は藪に阻まれ直登を断念、北東尾根間の斜面に残った雪を拾って斜上した。

 北東尾根を回り込むと北斜面に雪が残っており山頂まで続いていた。薙刀山に続く稜線のコル辺りに中田PL達と思われる人影を見つけてコールを送った。

 振り返ると御嶽から北に乗鞍、穂高、北アルプスが手に取れた。手前は芦倉山である。

 緩やかな山稜状の山頂到着、北に銚子ヶ峰から別山、白山へと続く美濃禅定道が眺められた。手前は薙刀山であるがB班の周回組はどうやら野伏の登りに掛かったようだ。

 白山の左に赤兎山が見えて奥に大長山が重なっている。赤兎の左は経ヶ岳である。

 藤井夫妻が早々に引き返して4人だけの少し寂しい山頂、薙刀山からの周回組が到着すれば賑やかになるだろう。その前に別山、白山をバックに1枚。

 山頂は風が吹き抜けて寒く山頂南斜面で薙刀からの周回組を待つことにした。小白山と荒島岳が近くに見えて、その左奥に能郷白山が、屏風山の三角錐も確認出来た。彼方に伊吹山がお椀を伏せた特異な山容を見せていた。

 1時間ほど遅れて周回組が到着した。頼もしくなった若者たちと握手を交わすと南斜面に招き昼食を頬張りながら団欒の休憩時間を過ごした。

 和田山牧場跡まで下山後、平木、後藤の両氏によるビーコン講習を行った。先日、乗鞍岳の雪崩事故が有ったばかりで熱心に聞き入った。雪崩埋没後15分で生存率が急激に低下するようであり初期捜索の必携機器である。

 温暖化で積雪が少なくなって雪崩の事故は少なくなったが忘れた頃にやって来る。先ずは降雪直後は雪崩の起きそうな斜面に近付かない、取り付かない、トラバースはしないを守ろう。(撮影・清水克)

 春山雪上訓練と銘打って計画した野伏ヶ岳であるが期待した参加者が少なく残念である。一度登った山には興味が薄いのかもしれないが技術や知識は何度も繰り返して会得するものである。我々が若い時代の富士山や御嶽山は雪上訓練のメッカでベテランも若手も滑落停止やザイルワークに汗を流した。年に最低一度はみっちり一泊二日の訓練をしないと咄嗟の行動に自信が持てなかった。繰り返し訓練することで無意識に身体が反応するようになるのである。スキルアップしようとする努力が自立した登山への近道で有ることを新人時代、徹底的に身体に沁み込むほどに扱かれた。

 我が会は美濃の山を「百山」選定してABC級に分け登山を推奨しており完登者を表彰しバッジを進呈している。表彰は自己申告で審査もないしどんな方法で登ろうと勝手である。

 しかし、百山の頂に立つだけでは物足らない。百山に登る過程で成長する登山観を表彰していることを知っていただきたい。地味な訓練や講習に参加して主体的な登山が出来るように成長して欲しく会として手助けをしている。山は学びの道場である。ただ数を登るだけのさもしい登山者になってほしくないからである。完



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