大垣山岳協会

銚子ヶ峰・願教寺山・薙刀山・野伏ヶ岳 大縦走 2018.03.31

願教寺山

【 個人山行 】 銚子ヶ峰・願教寺山・薙刀山・野伏ヶ岳 一日縦走 清水克宏

  • 日程:2018年3月31日(土) 快晴
  • 参加者:清水克(単独)
  • 行程:自宅2:30―白山中居神社(駐車)5:00…大杉登山口7:15…石徹白大杉7:25…(ピッケルを取りに往復1時間ロスタイム)…神鳩避難小屋10:30…銚子ヶ峰11:45…1,784mピーク分岐12:20…願教寺山13:50…よも太郎山15:05…日岸山15:55…薙刀山16:40…野伏ヶ岳18:05…白山中居神社20:50―自宅22:555 (―:車、…:徒歩)

 霊峰白山に向かう「美濃禅定道」の中継地白山中居神社のある石徹白集落。その西側には岐阜・福井県境の山々-願教寺山(1,691m:ぎふ百山)、よも太郎山(1,581m)、日岸山(1,669m)、薙刀山(1,647m:続ぎふ百山)、野伏ヶ岳(1,674m:日本300名山・ぎふ百山)が連なる。豪雪地帯のため登山道はなく、残雪期に登られることの多いこれらの山々を、銚子ヶ峰経由の周回・一日縦走する計画を立ててみた。雪の状況次第だけれども、設定した所要時間13時間30分。早立ちを心がけ、5時に石徹白の白山中居神社を出発して、18時30分に戻る目論見。万一はビバークもできるよう、ツェルトなどの装備もそろえて臨んだ。

 3月31日天気予報は快晴。夜明け前に歩き出した石徹白の大杉までの林道は、2週間前、初河山・丸山・芦倉山を周回縦走で取った時より、雪が落ちまくり状態は悪い。ピッケルを突き立てながら歩かなければならないポイントが数か所あった。

 かつての修験者たちのように石徹白の大杉に無事を祈り、尾根に取り付く。

 斜面にさしかかりしばらくで、わかんを装着。ブナやミズナラの明るい尾根を進むと、左に願教寺山が顔を出す。

 ゆるやかな尾根道を歩き始め、行く手に銚子ヶ峰が見えてきたところで、ピッケルがないことに気が付く。林道歩きの時使って背中に差していたのを、尾根の取り付きでわかんを着ける時、置き忘れてしまったよう。普段やらないミスを、こんな大事な時に限ってやってしまうとは。慌てて、荷物を置き走って取りに戻ったが、往復のロスタイムが約1時間。予定通りのピッチで行くと、野伏ヶ岳の下山途中で日が暮れてしまう。終日天候は安定していそうだし、月齢は満月、たぶん人気の野伏ヶ岳にはしっかり踏み跡が残っているはず。まずは願教寺山まで行って、往復にするか、予定通り進むか、二者択一することとする。

 丸山、芦倉山をつなぐ尾根の接続点にある神鳩避難小屋を10:30通過。

 小屋を過ぎ最初に出会うのが、白山を開山した泰澄の母が白山をめざそうとして石に変えられたという伝説がある母御石(1,748m)。無雪期は何ということもない穏やかなこの小ピーク直下に厚い雪が重みでずり落ちるようにして、大きな裂け目ができている。尾根そのものは穏やかなのだけど、裂け目を避けて左右に巻く時、バランスを崩すと数百メートルは滑り落ちそう。雪が緩んで、アイゼンも期待できない。背丈以上ある深い裂け目に沿って慎重に登り、中に降りられそうなポイントを探し、乗り越える。振り返ると、丸山、芦倉山へと続く稜線が目の当たり。

 11:45、人影のまったくない銚子ヶ峰山頂に立つ。行く手には三ノ峰から別山まで白山禅定道のルートが深い雪に覆われ横たわっている。今回の縦走ルートは、銚子ヶ峰の先にある1,784mのピーク(画像中央)から、左手に折れる。分岐通過は12時。予定時刻を1時間オーバー、覚悟を決めて福井・岐阜の県境尾根に入る。

 1,784mピークから、これから進むルートを観察。複雑な地形をみせる願教寺山、低くて少し隠れたよも太郎山、丸い日岸山、薙刀山、最後に控えた三角錐の野伏ヶ岳。まずは、願教寺山めがけて広い雪原を大下り。もし霧が出ていたら、ルート取りはかなり難しい場所だろう。

 願教寺山山頂部直下で向かい合うと、右手は大きな雪崩で谷底まで大きな雪のブロックが大規模に落ちている。左手は、谷底まで数百メートルの急斜面。亀裂が入り、ルート取りの難しそうな尾根は、最後がひどく鋭角。雪の下に隠れた亀裂の踏み抜きに注意しながら、ピッケルを突き立て、わかんのキックステップで進む。願教寺山山頂(1,691m)へ13:50に立つ。予定より50分遅れ。雪の具合でピッチは大きく変わりそうだけど、無風快晴日、先に進まない手はない。

 願教寺山山頂部はおだやかに広い。しかし、尾根の下りは、かなり左(岐阜県側)に大きく巻き、いくつもの雪の裂け目を越えていかねばならない。霧が出たら、このルート取りもかなり難しいだろう。振り返ると、願教寺山の福井県側は、雪も着かないほど大きく切れ落ちている。

 北美濃地震で山体崩壊を起こしたものだという。

 次に向かうのは、よも太郎山(1,581m)。すぐ後ろに控えた日岸山(1,669m)手前の小ピークという感じなのだけれど、斜面には亀裂が多く、ルート取りが難しくて、予定よりも時間がかかってしまった。

 3番目のピーク、日岸山。雪はまんべんなく着いて、途中までは登りやすい。最後の左手に雪の急斜面を巻くあたりが、滑落しないよう注意のいるところで、けっこう脚にくる。

 4番目が、薙刀山。おだやかな山容で、雪に亀裂はない。途中まで尾根をたどり、左手に巻いていく。あとは体力勝負で16:40、山頂に立つ。

 そして、最後に控えた野伏ヶ岳(1,674m)。日没は18時15分頃、とにかく明るいうちにどこまで行けるかが勝負。幸い、野伏ヶ岳から脚を延ばした登山者の踏み跡が残って、ルート取りに迷わなくて済む。あせる気持ちと裏腹に、夕暮れ迫る山の陰影ある表情に思わず立ち止まる。

 18:05何とか、日没直前に野伏ヶ岳山頂に到着。予定より1時間35分遅れ。予想していた通り、山頂にはこれまでと打って変わって多くの足跡が残されている。
最後に、北を振り返り、夕日に浮かぶ白山まで重畳する山々と、今日歩いてきたルートを仰ぐ。なんとも美しい時間。

 家族に遅くなるよと連絡を入れ、下山にかかる。

 山頂直下の亀裂をまたぐあたりまでは、何とか明るかった。あとは尾根を急降下するばかり。大日ヶ岳に満月が昇る。

 ヘッドランプと、月明かりを頼りに下山。尾根に張られたテントの明かりがうらやましい。19:15和田牧場跡に出、後は雪に埋もれた林道をたどる。明るければショートカットできる場所も多いはずなのに、愚直に道をたどるしかなく、思ったよりずいぶん時間がかかってしまう。 

 20:50無事白山中居神社に到着。なんとも長く厳しくも充実した山修行の一日でありました。

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