大垣山岳協会

五蛇池山 2013.07.07

五蛇池山

月報「わっぱ」 2013年8月(No.381)

【 一般山行 】 五蛇池山 ( 1147.6m Ⅲ△ ) 鈴木 正昭

  • 日程:2013年7月7日(日)
  • 参加者:L.西村洋、丹生統、鈴木正、杉本眞、古林定、柴田悦、藤森ふ、後藤正、小林和、長野邦、馬場昭
  • 行程:大垣6:00=道の駅さかうち=大谷川堰堤工事現場ゲート前で駐車7:15~25-旧林道分岐7:35-旧林道終点8:55-蕎麦粒山登山道分岐9:10~25-五蛇池峠10:50-五蛇池11:05-五蛇池山12:05~12:45-五蛇池峠13:15-旧林道終点14:40-車道出合15:50-16:00駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:美濃広瀬

 旧坂内、徳山の村界尾根上にある五蛇池山は龍神伝説のあるやぶ深い山である。私は95年6月に単独で登っているが、道迷いや激やぶでの苦闘の記憶が残っている。18年後、やぶや道、池はどうなっているか、見届けたい。

 広瀬の集落から五蛇池山西の五蛇池峠に突き上げる大谷川。前回登山では川沿いの林道を終点まで車で入れた。だが、今はその約4km手前のニシマタ谷出合手前までしか行けない。左岸斜面を大きく巻く地点から背丈を超す草やササで覆われ、崩壊して道床のない部分もある廃林道跡をえんえんと歩く。歩き出してすぐ、靴にヒルがいる、という叫び声が飛び交う。高温、多湿、おまけに昨日の大雨で足下のやぶはじめじめドロドロ。ヒルの天国。

 林道跡終点からスギやサワグルミの大木の林立する薄暗い登山道を進む。沢を渡り、蕎麦粒山への登山道分岐で一息入れる。15年前にここから蕎麦粒山に登っている。道標は今もあるが、廃道となったらしい。体を点検すると、足に計3カ所でヒルが咬みついていた。ズボンに大きな赤い日の丸がにじんでいた。他にも被害を訴える人がいたが、私が最大の被害者らしい。出発前にヒル除けスプレーをたっぷり塗布したのに効き目はなかった。「ヒルくらい平気だよ」とやせ我慢を言いながら、歩き始めた。

 草やぶの中に薄いながらも踏み跡はあり、赤テープ類も各所に付いている。多少は登る人がいる証拠だ。谷の分岐がいくつもあったが、西村リーダーの下見や地形把握のおかげで正確に本流をすすみ、最後のゴーロ状のV字溝を登りきると五蛇池峠であった。広瀬から五蛇池峠を経て徳山村戸入に通じる古道があった。私たちはその道沿いをたどった。ブナの大木で覆われた小さな峠には昔の痕跡はなにも見当たらなかった。

 峠からすぐ東に進んだ二重山稜の間に五蛇池の一つ(標高約1040m)がある。一帯に5つあるという池の一つとされる。坂内村史に大蛇の移住の説話が載っている。村内にある丁子山(1011m)から一斗樽を転がしたような跡が一筋下がっていた。大蛇が通った道に違いない、と村人が行方を探ってみると、その先は雲に包まれた五蛇池山だ。広瀬の村人は、チョウシの大蛇は住みかを五蛇池に変えた、と言い伝えたそうだ。

五蛇池の一つとされる池

 池の直径は20mほどか。前日の雨で水はしっかりあった。緑の水草が湖面を覆い水面は隠れていた。以前、この池の端に「五蛇池大明神」の木柱が立っていたらしいが、見つからない。神秘的な風景だ。どこか生臭い臭いが漂っていたが、大蛇の臭いか。水の腐敗のせいかもしれない。

 山頂まで薄い踏み跡はあったが、低木の厚いやぶで覆われている。先頭部の数人がナタで刈り払いながらゆっくり進み平坦な丘の上の頂上に着いた。ブナの木に囲まれた頂上から眺望はまったくなかった。

 往路を下り初め五蛇池峠前で通り雨。雨がやむと、目の前に小蕎麦粒(1230m)の三角形が立っていた。大谷川の源流部を下る途中、マイマイガの幼虫に葉を食い荒らされ、茶色の枝先をまとっているブナの樹林(山中雑記 ブナを食う毛虫写真 参照)の姿を見た。ただ、これも長い間に一度の自然の営みだと知った。異様な光景だったが、植物生態が作り出す正確で緻密な現象の一つであった。正常の中の異様なのだ。

 廃林道に入り、草やぶの中を歩いていると、雷鳴と強い雨が2度降った。ぬれねずみの状態で駐車地に戻った。着替えると、私のヒル被害は合計5カ所に増えていた。

<ルート図>

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