大垣山岳協会

山中雑記 マダニと新ウイルス

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2013年3月(No.376)

マダニと新ウイルス

 雪尾根歩きが、思わぬ激やぶ歩きとなった。それも、背丈を越すササやぶ。2月21日、中津川市川上の恵那神社裏から尾根伝いに恵那山前山(1350m)に登った。予想より雪が薄くて数カ所で濃密なササやぶに遭遇。ササを潜りながら、思い及んだのは最近報道で賑やかなマダニによる新ウイルス感染症だ。

 感染症は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)。2月26日までに5人が感染、死亡したと報道された。この感染症は中国で2009年に集団発生し、その後ウイルスが特定された。高熱、嘔吐、下痢、頭痛などを伴い致死率は12%だという。日本のウイルスも中国のものとわずかな違いを除き、ほぼ一致した。
中国ではマダニによる媒介がほぼ確定されているが、日本の事例では患者がマダニにかまれたかどうは不明であり、マダニから新ウイルス検出もされていない。

 マダニは野や山や草地が住み家だ。特にササ原は大好物らしい。マダニは日本紅斑熱やライム病の病原菌を媒介し、毎年少ないが患者を出している。ササ原にはツツガムシ病を媒体するツツガムシもいる。私は、ダニ類にひどくかまれ、過去3回ほど病院で受診したことがある。ダニの種は不明だったが一応、ツツガムシ病の抗菌剤を投与された。

 しかし、新型ウイルスには抗菌剤はなく、治療法はまだない。マダニは寒い冬には活動しないので、今回はあまり心配ないのだが、春夏はどうなるのか。新ウイルスを蓄えたマダニがササ原にうようよ出現となれば、やぶ山派は壊滅だ。ただ、全てのマダニが新ウイルスを保有しているわけではない。局地的、一時的な流行かもしれない。厚労省のウェブ説明文には、野外活動では、長袖、長ズボン、肌を出さない衣服を着てかまれないようにする、かまれたら医師にかかる、などの予防策が載っている。やぶ山派の皆さん、これらの予防策を十分取った上で、恐れず登りましょう。

(鈴木 正昭)

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