大垣山岳協会

<徳山の森の行方> ⑩ 登山者の目

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2012年11月(No.372)

<徳山の森の行方> ⑩ 登山者の目

 ダムの出現で、私たち登山者はこの山域の名山や秘峰へのアクセス道路を失った。だが、阻まれても乗り越える心意気は健在だ。新しい登山ルートを見出し、果敢に挑む人もでてきた。若丸山に塚や櫨原から尾根伝いに登るルート、ホハレ峠経由で不動山、千回沢山に沢沿いで登るルートなどだ。アクセスが難しくなっただけ、入る人が減り、静寂となった山域は登山的価値が高まるという面もあろう。

 一方、岐阜県が公有地化事業で取得した県有林の天然林化には作業道が必要で、現在揖斐川町が工事を進めている。先にも述べたように、工事実績はまだわずかだが、ダム湖により途切れた扇谷沿いの作業道はまもなく、旧道に接続する見通しだ。岐阜・福井県境にある若丸山や杉倉登山への接続道路が復活することになる。

 ただ、水資源機構や岐阜県は登山者ら一般への車の通行は考えていない。通行可となると、廃棄物の投棄など環境破壊が怖い、という理由だ。その点は分かる気もする。

 ならば、歩けばよいではないか。歩くだけなら可能だろう。ホハレ峠から陸の孤島となった門入地区への作業道は頓挫したままだ。この道は今でも共有林持ち分を持つ人たちの願いでもあり、心情は理解できる。登山者にも便宜は増す。だが、通じたら今は歩くしか入れない門入の自然荒廃は免れないように思う。

 山岳環境と森林整備と地権者の権限。事業は激しく絡み合ったやぶを抜け出ることができるだろうか。

終わり

(鈴木 正昭)


<徳山の森の行方> ⑩ 登山者の目
ご覧のページです。

コメント