大垣山岳協会

山中雑記 ユクノキの花

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2012年8月(No.369)

ユクノキの花  鈴木 正昭

 ユクノキという木をご存知だろうか。別名ミヤマフジキ。マメ科の落葉高木で深山にまれに生える、と植物図鑑にある。そのユクノキ(と思われる)の木数本に7月の左門岳山行の際、遡行した斧内谷で出合えた。

 標高800m余で、高い木の上に真っ白な花がびっしり集合して乗っていた。新雪がふんわり木枝に積もっているようだ(写真①)。「あれ、なんなの」と同行者たちも空を見上げたが、私も含め知る人はいなかった。白い小さな花びらがたくさん地表に落ちていた。

写真①

 帰宅後、図鑑やネットで調べた結果、ユクノキらしいことが分かった。名は「雪の木」の秩父地方の方言名だという。花の優美なことで、植物マニアの間では人気が高いようで、ネットに観察記録が載っていた。渓流に面した斜面下部に多く、徳山ダム周辺や下呂市小坂での観察記録があったが、根尾谷筋での記録はなかった。

 同じ仲間のフジキと類似しているが、両者の区別は葉の裏側の色の違い。ユクノキの葉裏は粉白色だ。しかし、葉は20m余の高さにある。手の届く位置にあることはまずない。花も目前で見ることは難しい。急な斜面を登り、近づくしかない。観察の難しさを嘆くマニアの報告も目にした。下呂の観察者によると、今年は例年にないユクノキの花の大豊作の年という。ある記録にはユクノキは4,5年に一度しか咲かないとあった。本当なら、実に幸運な山行だった。

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