月報「わっぱ」 2012年9月(No.370)
【 研修会 】 国立登山研修センター(富山県立山町芦峅寺) 中田 英俊
- 日程:2012年6月29日(金) ~ 7月1日(日)
- 参加者:中田英
- 行程:後述
安全登山普及指導者中央研修会に参加
わが会ではかつて盛んだった岩壁登攀中心の山行が近年少なくなった。そうした現状を踏まえて、少しでも会員の登攀技術向上を図ろうと、私は会から派遣された。
6月29日(金)
午後2時過ぎに開講式。講師陣の統括役は愛知県山岳連盟の北村憲彦氏だった。私を含め4名の第2班の担任講師は信州大学学士山岳会のS氏と同人クライミングファイト所属のM氏の二人。
2班の班員は、栃木県立真岡高校教師のS氏、東京ヤングクライマーズクラブのH氏、高松山の会のK氏(女性)、そして私。
開講式後、すぐに研修所内にある体育館で、講師の一人である笹倉氏による「確保理論」の講習。登攀道具の使用方法や機能、登攀者の墜落の際に生じるインパクトフォース(衝撃力)の算出方法などを教わった。計算式なども登場したが、要するに衝撃力の大きくなるような確保をするな、ということだった。グランドフォール(地面への墜落)の途中で確保されても、確保状況が悪いと衝撃により重大な事故となることがあるという。
6月30日(土)
朝5時30分に起床。朝と夜の食事の準備、後片付けの後、ザイルを使った登攀システムの講習が始まった。
屋外にある人工壁を使って、岩壁を登る技術そのものよりも、登攀におけるビレイ(確保)の技術習得が講習の主題だった。ザイルを二本使用した「マルチピッチ」といわれる登攀方法の確保のシステムを、何度も何度も繰り返し練習した。
ザイル一本では、カラビナをかける中間支点が右に左にジグザグになることが多い。当然、登攀者も確保者もスムーズにザイルをさばきにくくなる。マルチピッチは左右に分けてセットした二本のザイルを使用することによって、中間支点が左右どちらにも取れ、ザイルがジグザグにならず、そのストレスを大幅に軽減できる登攀方法だ。
しかし、机上の講義で教わっても、実際の現場で繰り返される確保システムの意味がよくわからない上に、次々と新しい確保方法を指示されるので、何が何だか分からなくなる時もあった。その都度講師が丁寧に説明してくれて、何とか「登攀システムの流れ」みたいなものを理解し、こなせるようになった。
システムをスムーズにこなすのも大事だが、それには大声を出して、パートナーに自分の意思を伝えることが先決であることを何度も注意された。
7月1日(日)
研修所からバスで10分ほどの所にある「雑穀谷」と言われる岩場で実技講習。ハーケンやカム、ナッツと言った道具を実際に使用して、ビレイポイントを自分の手で構築する方法を教わった。一口にハーケンを打つといっても、打ち込む岩の状態、打ち方など簡単ではない。カムやナッツなどは、本当にこんなもので支点が出来るのか?と思うくらいだったが、どうして、講師がそれらの道具を使用して確保支点を作った後、全体重を預けてもビクともしない。講師たちは現場では誰が作ったかわからない支点は使用せず多くは自分で作った支点を使うと言っていた。
雑穀谷での講習後、研修所の体育館に戻り、登攀システム全体のおさらいをした。
続く閉講式での校長の「何も考えなくても、体が勝手に動くようになるまで繰り返し練習をするように」「今回学んだ事を、出来るだけ多くの登山者に伝え、より安全で楽しい山登りをしてもらいたい」という言葉を忘れないようにしたい。
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