月報「わっぱ」 2012年3月(No.364)
遭難と衣服の選択
今年の正月は珍しく山での遭難事故が少なかった。その中で槍ヶ岳と穂高岳での事故が目立った。新聞によると、いずれも低体温症だったという。
この低体温症はどうして起きるのか。『アエラ』1月16日号に、これに関する解説記事が出ていたので紹介したい。
我々の体温はどこで生産されているのか。肝臓や背中にある脂肪組織で、これを血液が全身に運び出す。このとき、生産よりも消費の方が上回れば低体温症を発症する。これが続くとまず全身に震えが来る。そのままで処置を施さないと熱生産が減少し、ますます低体温を促し、心臓機能が低下して死に至る。
さて、最初に述べた二つの遭難事件について、筆者は着衣に問題があったのではないかと推察している。
すなわち、近ごろ流行の発熱機能を持つという新素材の下着が多く出回っているが、問題だ。メーカー側は体から発した水蒸気を熱エネルギーに変換する機能だという。だが、平地での効果はあるにせよ、冬山の酷寒の地では水蒸気の量は微々たるものだろう。実質的な効果があるとは思えない。
事実、効果を疑問視する雑誌記事もあった。
効果が薄いのであれば、ただの薄い化繊下着であり、かえって危険な衣料ということになるはすだ。
(Y・T)
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